中国で経済「新サイクル」論争が盛り上がるワケ 共産党大会「前」というタイミング

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   2017年に入り、中国の経済データは全体的に上々で、上半期に引き続き中国経済の「成績表」は市場の予想を上回っており、市場の雰囲気は日に日に楽観的になっている。

   それゆえ、17年の第2四半期に入ってから、中国経済がすでに「新サイクル(新周期)」に入ったという情報が話題に上り、論争を引き起こしている。

  • 中国経済の「新サイクル」をめぐる論争とは(画像はイメージ)
    中国経済の「新サイクル」をめぐる論争とは(画像はイメージ)

「L字型経済」から「成長の転換期」へ?

   本来この話題は比較的に専門的なものだったが、現在「新サイクル」に関する討論は様々な企業・産業界の人々までも巻き込んで熱を帯びている。

   中国経済が「安定を維持しつつ良い方向に発展していることが、より顕著」であることは、学会でも大きな異議はない。しかし、これまでの証拠だけでは、「新サイクル」がすでに到来していると証明することはできない。過度の楽観的な見方は、益よりも害の方が大きい。

   「新サイクル」をめぐる論争は、17年初めに、ある証券会社が発表した2017年を展望するマクロ経済の研究報告に端を発している。同報告は、中国経済が成長の転換期に入って、「L字型経済」の曲がり角に差し掛かっており、今まさに「新サイクル」のスタートラインに立っていると指摘している。それから数カ月後に、この見解を持つ者たちはますます自信を深めるようになった。

   しかし、その「新サイクル」と称するものの中身が不明なだけでなく、それを見分けるための顕著な印もない。経済学的な意味において、それが在庫と連動する短期のキッチン・サイクルや設備投資に関係する中期のジュグラーサイクル、またインフラや技術革新に起因する長期のコンドラチェフサイクルのうち、どのサイクルに当てはまるものかも断定できない。いわゆる「新サイクル」は多くの場合、経済成長の前兆に対する楽観的な雰囲気を表している。

設備投資の刷新はまだまだ先の話

   早々に「新サイクル」がすでに確立されたと宣言するとしたら、危険は目にもあきらかである。なぜなら、こうした見方は、供給側の改革の成果を過大評価し、目の前に迫っている金融と債務のリスクを過小評価してしまう。さらに、技術革新政策による効果がすでに十分強化されていると思い込んでしまい、進めるべき経済モデルの転換の最適の時機を逃してしまうからだ。

   あるシンクタンクの研究では、中国はすでに何度も設備投資を目標にした「ジュグラーサイクル」を経験しているが、設備投資が成長に及ぼす影響はだんだん下がっている。総人口の高齢化などの構造的な要素が関係しているからだ。設備のさらなる刷新では、高い成長を支えるのは難しい。まして、中国の製造業界は生産能力削減の途上にあり、これまでの生産能力の周期から判断すると、大規模な設備の刷新は少なくとも2018年まで待たなくてはならないだろう。

   さらに、技術革新により決まる長いサイクルには、より多くの不確定な要素が伴う。現在の技術革新は中国にとってまだ先の事柄であるため、現在のニーズを満たすものとはならない。それゆえ、「新サイクル」がすでに到来していると断言するのは気が早すぎる、と言わざるを得ない。

インフラ・不動産に依存する成長ロジック

   最近の中国共産党中央政治局会議などから伝わる情報からすると、現在の経済情勢に対する中国の政策決定層の見方はいたって冷静であり、強調されているのは現状の深化及び改善であって、転換ではない。いわゆる「新サイクル」との言い方は政府側の見方とは逆だということがうかがえる。

   マクロ経済の動向から判断すると、特にサイクルの転換点の判断に関しては、一時、一地域そして限られた数のデータの動きに基づくものであるべきではない。むしろ、その背後にある成長ロジックに変化が生じていないかどうかに注意を払うべきだ。

   中国経済はまだ基礎固めの段階にある。現在のGDPと投資の成長は2010年以降最低ラインをうろついており、GDPの累計は前年比で成長が2015年末の水準に戻ったが、投資の累計の方は前年比で成長がまだ2015年末には及ばない。今後の中国経済の成長は、依然として下降圧力に直面することだろう。インフラ建設や不動産に過度に依存する成長ロジックは、根本的な変換とはならない。

   現状を無視して「新サイクル」を打ち出す人たちには、近く開幕する5年に1度の共産党大会の前に祝賀の雰囲気を作りたいという下心があるのではないかと勘繰りたくなる。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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