2018年 10月 24日 (水)

NHK「プロフェッショナル」に大反響 「戦い続ける」犬の訓練士、その真意と信念を聞いた

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   2018年1月29日放送の「プロフェッショナル 仕事の流儀」(NHK)で放映された、「戦う訓練士」こと犬の訓練士・中村信哉さん(47)のドキュメンタリーに、視聴者から「泣いた」との反響が相次いでいる。

   中村さんが預かるのは、飼い主の手に負えなくなった凶暴犬ばかり。手厳しい訓練は時に批判を浴びることもある。だが心を鬼にして、犬と向き合う。いったい何がそうさせるのか。J-CASTニュースは、本人に取材した。

  • 犬の訓練士に密着
    犬の訓練士に密着

ほめるのも大事、叱るのも大事

   北栃木愛犬救命訓練所(栃木県大田原市)で所長を務めている中村さんは元々、警察犬の訓練士だった。警察犬訓練所で5年半の修行を積み、現在の訓練所を設立した後、問題行動を起こす犬の飼い主から訓練の依頼が入るように。中村さんはそんな犬の更生に尽力するため、警察犬の訓練をやめた。

   飼い犬の噛み付き事故は例年、4000件を超えている。中村さんは預託訓練専門で、全国各地の飼い主から凶暴犬の更生を引き受ける。この20年間で700頭超、全体の約8割を更生させ、現在も100頭の凶暴犬を抱えている。

   番組によると、犬が凶暴化する要因はさまざまだという。ただ、「叱る」「ほめる」の両極端でしつけられるなどして、人と感情を交わした経験が希薄なのだそうだ。

   中村さんは一体、どのように犬を更生させているのか。番組では、エサやりの模様を紹介した。

   「待て」「伏せ」などと指示し、犬の檻にエサを入れ、2本の竹で作った手製のムチを使う。問題行動を起こす犬は、本能が抑えられない状態にあるため、食事の時間にムチで大きな音を出し、最低限の痛みを与え、我慢の経験を積ませる。こうすれば、犬は何を叱られているのか、音と刺激で覚えるようになるという。

   中村さんは番組の取材に「(叩くことは)気持ち良くはない。これでも犬好きなので」と前置きした上で、

「厳しいのが嫌いだからといって、やらなかったら、襲ってくることも止まらないし、かみ続ける。かむ犬は治らないと処分してしまったケースがある。どんな方法を使っても、飼い主の元で一生を送らせたい」

と強調した。

「私はほめるしつけが間違っているとは思わない。ほめるのも大事、叱るのも大事、片一方だけでやるのがダメ。まったくほめられなかった子どもはどうなるか。同じことが犬の業界でも起きている」

「涙が止まらなかった」「泣きそうになった」

   番組ではその後、中村さんが8歳の柴犬「まめ蔵」と向き合う様子に密着した。

   訓練所に来てから、既に9か月。多くの犬は半年もすれば変化の兆しが表れるそうだが、まめ蔵は人への関心を示すどころか避けようとしていた。「ちょっとしたことに対して拒絶が半端じゃない」(中村さん談)。

   ある日のこと。中村さんが「伏せ」と指示しても、まめ蔵は言うことを聞かない。中村さんが檻を開け、手を伸ばした時、まめ蔵は大きな悲鳴を上げ、その手にガブッとかみついた。

   「痛ってえっつんだよ」。中村さんはそう声を上げると、まめ蔵を檻から外に出し、握りこぶし、そして手の平で頭部を叩いた。

   だが中村さんがある日、まめ蔵を普段と違う檻に入れた時のこと。まめ蔵はいつも一定の距離感を保っているのにもかかわらず、中村さんの後をついてくるようになった。数日間、そんな状態は続いた。

   ここで我慢を覚えれば、立ち直るきっかけをつかめるはず――。中村さんはそう考え、まめ蔵にエサを出さないことにしたが、それでも「待て」「伏せ」の指示に従い続ける。まめ蔵が殻を破った瞬間だった。中村さんは「褒美」としてエサを与える。

   その後、成長したまめ蔵と面会した飼い主の目には涙が...。まめ蔵は2018年1月21日、訓練所を卒業。番組の最後には、まめ蔵が中村さんの元へ駆け寄り抱きかかえられる場面も流れ、ツイッターやインターネット上では

「中村さんとまめ蔵の話、物語にはないリアルな感動があった 自分の好きな犬に対してあれだけ厳しくできるのは本当の愛があってこそだと思う」
「最後まめ蔵が自ら中村さんの方へ抱きついてて泣きそうになった」
「ストの方、まだ体が強張り気味のまめ蔵を抱きしめながら、ありがとうと囁いたシーンに涙が止まらなかった」

との声が続出した。

中村さん「本当は、私みたいな存在がいてはいけない」

   一方で、中村さんのしつけは時として「鞭打ち式体罰」「暴力を振るう訓練士」と批判にさらされる。実際、番組放送後のツイッターには

「訓練士、豆ぞうをグーで頭殴った。こんな躾ありえない」
「言っていいですか?棒で殴って距離が縮まるわけないじゃん。バカなんじゃないの、このひと」

などの声が上がっていた。

   だが中村さんがそのような声にひるむことはない。自身のフェイスブックでは放送後、「私が戦う相手がおわかりいただけたでしょうか?」と投稿。その上で、

「そうです...『世論』と『世論に負けそうになる自分』との戦いです。きっとこれは死ぬまで続くのではないかと思っています。それでも戦い続けます。後に続く者達と行き場を失った咬み犬がいる限り」

とつづった。

   中村さんは1月30日のJ-CASTニュースの取材に、

「体罰を使うことを否定するのが今の世論。ですが、主流のトレーナーがそうした声に流され、さじを投げた結果、治るものも治らなくなっている」

と話す。その上で、

「犬は平等じゃない。理屈の違う子もいる。トレーナーや獣医師、繁殖者らが本来、手をかけてやるべきなのだが、そうしたシステムが確立しておらず、手遅れになってしまっている。本当は、私みたいな存在がいてはいけない」

と強調した。

   テレビ局の密着取材を受けるのは、これが初めて。放送後の反響については、「(しつけへの)賛同者の方が多かった」と感じている。応援のメールも3~40件、電話も5、6件届いたが、「虐待だ」と批判するものは1件だったという。

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