2020年 5月 30日 (土)

岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
パロディ動画が映す金正恩へのジレンマ

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米朝首脳会談を国民の77%が支持

   翌日、セントラルパークのすぐ南にあるワインショップに入ると、店の経営者がたまたま韓国系アメリカ人の50代くらいの女性だった。

   とても明るいエネルギッシュなその人は、目を輝かせて言った。

   「素晴らしいことが起きているわ。私が生きている間に、朝鮮半島がひとつになるかもしれないでしょう」

   「北朝鮮が、本当に核を手放すと思います?」と私が聞いた。

「金正恩はスイスに留学していたし、彼の父親や祖父とは違うんじゃないかと思うのよ」

   もちろん、韓国系アメリカ人が皆、同じように考えているわけではない。

   その女性は続けた。「私の感覚では、昔を知っている年配の人たちは、また裏切られるだろうと金正恩を信用していない。でも若い人たちのなかには、北は変わると信じている人も多いわ」

   別の日にマンハッタン中心部にあるブライアントパーク脇で、私たち夫婦が日本語で話していると、日本が大好きというジェームズ(26)が、日本語で話しかけてきた。

   北朝鮮の話になると、彼が言った。

   「僕はトランプが大嫌いだから、再選は絶対にしてほしくない。でも何より避けたいのは第三次世界大戦だから、トランプがそれを阻止できるというなら我慢するよ」と笑った。

   2018年5月10日朝、北朝鮮に拘束されていたアメリカ人3人の無事帰国のニュースが、どのテレビ局でも繰り返し流された。

   その日、トランプ氏が「フェイクニュース」と攻撃し続けてきたCNNニュースは、米朝首脳会談を米国民の77%が支持しており、トランプ政権の北朝鮮政策への支持も53%と一気に上昇、と報道した。トランプ氏と金氏が互いに激しい非難の応酬を展開していた2017年11月には35%だったから、7割近く伸びたことになる。

   トランプ氏は5月8日、イラン核合意からの離脱を発表。14日にはイスラエルの米大使館がエルサレムに移転する。6月12日の米朝会談の場所もシンガポールに決まった。 トランプ氏は「我が道」を、勢いよく進み続けている。       (随時掲載)


++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計37万部を超え、2017年12月5日にシリーズ第8弾となる「ニューヨークの魔法のかかり方」が刊行された。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。


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