2018年 10月 19日 (金)

孫氏が「投資家回帰」? 米携帯「統合」が意味するコト

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   ソフトバンクグループ傘下の米携帯電話4位スプリントが、同3位のTモバイルUSと2019年半ばまでをめどに合併することになった。Tモバイルの親会社、ドイツテレコムとの間で経営の主導権を巡り対立していたが、ソフトバンクが譲り、18年4月末に合意に達した。規模拡大で携帯の次世代通信規格「5G」への投資を急ぐことになるが、背景にはソフトバンクの「心変わり」があった。

   両社の契約者数の単純合計(2017年末)は約1億2600万となり、米携帯業界で首位ベライゾン・コミュニケーションズ(2017年末契約者数1億5045万)、2位AT&T(同1億4156)に肩を並べ、「3強」体制になる。

  • 孫正義氏(2013年撮影)
    孫正義氏(2013年撮影)

Tモバイルがスプリントを逆転

   新会社名はTモバイル。4月27日の終値を基準とすると、スプリントの企業価値は約590億米ドル(約6.4兆円)とされ、合併比率はTモバイル1株に対しスプリント9.75株。新会社の株式保有比率はドイツテレコム41.7%、ソフトバンク27.4%となり、ソフトバンクの子会社でなくなる。新会社の最高経営責任者(CEO)は、現TモバイルCEOのジョン・レジャー氏が就き、取締役14人のうちソフトバンクは孫正義・会長兼社長ら4人、ドイツテレコムは9人を送り込む。

   ソフトバンクは2013年にスプリントを約2兆円で買収。当初からTモバイル買収を視野に検討が進んだが、オバマ政権時代の米連邦通信委員会(FCC)は、3社寡占でサービスが低下するとして反対し、頓挫した。当時の順位は、スプリント3位、Tモバイルが4位だったが、その後のスプリントの業績不振で逆転されていた。

   通信規制緩和、業界再編に理解があるトランプ政権発足を受け、2017年6月に再び交渉が始まり、大筋合意と報じられるところまでいったが、最終的に両社が主導権を譲らず、10月末に協議は打ち切られた。そして今回、3度目の協議で、ようやく話がまとまった。ただ、FCCの審査を通る確証があるわけではない。日本が3社寡占で競争が減り、楽天の参入で4社体制に戻ろうとしているように、3社では競争なくなるとの指摘は根強く、認可まで楽観を戒める声もある。

   合意を後押しした最大の要因が、「5G」だ。通信速度が現在の100倍、あらゆるものがインターネットでつながる「IoT」の基盤になる規格で、2020年に実用化される見通しだ。スプリントは早速、「新会社は今後3年間で400億ドル(約4兆3000億円)を投資する」と表明した。ベライゾンとAT&Tは2018年後半から固定通信の代替として、一部地域で5Gの商用サービスを始める予定で、年間設備投資額は、Tモバイル、スプリントは単独ではそれぞれ、2強の3~4分の1にとどまっており、この面から、統合は不可避だったといえる。

「携帯電話依存」から変身図る

   5Gは、「通信とメディアの融合」とも密接に絡む。ベライゾンは米ヤフーのメディア部門を買収したし、AT&Tは米タイムワーナーの買収を発表済みと、はるか先を行く2強についていくためにも、統合が必要だった。

   統合を後押ししたもう一つが、ソフトバンクの事情だ。今回の合併合意後、初めて公の場で孫会長兼社長が語ったのは5月9日の決算発表の場。「(昨秋の統合断念から)半年でまだ舌の根も乾かぬうちに変移した、信用がおけないと評価されると思うが、恥ずかしい思いも分かったうえで、飲み込む」と語った。米携帯事業について「4位のままでいるよりも、合併によって上位2社と規模的にほぼ並ぶ。米国で1位になる可能性も戦略的に見えてくる」と述べたが、その背景には「携帯電話依存」から徐々に変身を図っている孫氏の戦略がある。

   同じ会見で、孫氏は「私自身の関心が、より『群戦略』に移ったのが一つの要因」とも述べた。多様な事業で稼ぐ経営戦略で、2017年にサウジアラビア政府などと立ち上げた10兆円ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」がその中心。孫氏はスマートロボットやAI(人工知能)、IoT関連ビジネスへの関心を強め、持ち込まれる案件を吟味する作業が「楽しくてしょうがない」と公言している。

   様々な投資を重ね、旧日本債券信用銀行破たんを受けて後継のあおぞら銀行の筆頭株主となり、巨額の売却益を得るなどしたうえで英ボーダフォンの日本事業を買収して携帯事業を核とする「実業家」として隆盛を誇った孫氏の、「投資家回帰」と見る向きもある。

   そんな孫氏においては、米携帯事業への拘りは、もはやかつてのように強くはないのかもしれない。

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