北朝鮮の看板アナウンサーとして知られる、朝鮮中央テレビの李春姫(リ・チュンヒ)アナウンサー(75)に、欧米メディアから「引退説」が浮上している。番組の近代化にともなって世代交代が進んだ結果だという。ただ、李アナウンサーは、金正日総書記の死去やミサイル発射、核実験など、北朝鮮にとって重要な局面でニュースを読んできた人物で、北朝鮮にとっては象徴的な存在だ。それだけにそう簡単に「完全引退」することは考えにくく、引き続き不定期で出演は続くとの見方も出ている。李アナウンサーのような伝統的なスタイルでは「もう理解されない」引退説は、2018年12月2日(米東部時間)の米ABCテレビの報道が発端だ。朝鮮中央テレビの番組の近代化について伝える中で、李アナウンサーについて「しばらく北朝鮮のテレビに姿を見せておらず、若いキャスターに取って代わられた」と指摘した。最近の朝鮮中央テレビでは、単にアナウンサーがスタジオで原稿を読み上げるだけでなく、街頭インタビューを交えたり、ドローンやCGを活用したりと表現の幅が広がっている。ABCでは、この背景を「金正恩時代のスローガンは、新世紀とその流行の後を追うことだ。この方針の変化が番組制作にも反映されている」(東亜大学のカン・ドンワン教授)と伝えており、北朝鮮の視聴者も目が肥えてきつつあるため、李アナウンサーのような伝統的なスタイルでは「もう理解されない」(同)としている。このABCの報道を受ける形で、英テレグラフ紙も12月3日、李アナウンサーの「芝居がかった出演」が「まもなく過去のものになるかもしれない」と報道。衣装の色から「ピンク・レディー」と呼ばれていることも紹介した。「むやみに引退させない」説もただ、李アナウンサーは、正恩氏の水産事業所視察を伝える12月1日のニュースに登場しており、「完全引退」かどうかは疑わしい。こういったことを踏まえ、聯合ニュースは12月4日、李アナウンサーが象徴的な存在でもあることを指摘しながら、「むやみに引退させないだろう」「健康を考慮すると、出演回数は減るだろうが、当分の間は重要なニュースを読み続けるだろう」という高位脱北者の見立てを伝えている。(J-CASTニュース編集部 工藤博司)