2019年 7月 17日 (水)

高橋洋一の霞が関ウォッチ
実質賃金があぶりだす「アベノミクスの正しさ」

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   ちょっと聞きなれない言葉が国会で話題になっている。実質賃金である。もともとと毎月勤労統計の統計不正の追及から出てきたが、アベノミクス「擬装」という流れから出てきている。

   2018年でマイナスかどうかが議論されているが、毎月勤労統計では多分わずかのマイナスだろう。ただし、結論を言えば、だからアベノミクスがどうなのかといった程度の話だ。

  • 実質賃金が上がるには…
    実質賃金が上がるには…

他の統計からも同種データ入手可能

   実質賃金は、概念的には名目賃金を物価指数で割り算して求める。名目賃金は、各雇用者の給与、賞与などであるが、各雇用者に聞くより、事業者の給与などの総額を調べて雇用者数で割って求めるほうが便利だ。

   実際、名目賃金であっても多種多様だ。一般的なサラリーマンは同僚の賃金をよく知らないはずだ。給与や賞与は人によって異なるから、あえて知りたくもないだろう。だから、統計として個別の労働者に対して調査することはやらない。そこで、企業、事業所に給与総額などを聞き調査するのが一般的だ。話題になっている毎月勤労統計もこのタイプだ。

   となれば、実質賃金は総所得を雇用者数と物価指数で割って得られるわけだ。総所得については、毎月勤労統計の他の統計からも同種のデータを得ることができる。その意味で、各種統計から導かれる国民経済計算(GDP統計)の方がより信頼できる。

   2017年の名目雇用者報酬は前年比1.6%増、実質雇用者報酬は1.2%増。18年はそれぞれ3.1%増、2.3%増。18年の雇用者報酬についてみると、名目、実質ともに前年より増加している。

   ここまでは、毎月勤労統計の再集計のよるデータ改定として公表されている。そこで、雇用量で割り算して名目賃金と実質賃金を計算してみよう。この「賃金」の定義は筆者独自のものであるが、概念としては間違っていない。

   雇用量の伸びは2017年1.2%増、18年2.0%増だった。となると、17年の名目賃金は0.4%増、実質賃金は0%、18年はそれぞれ1.1%増、0.3%増だ。名目賃金は順調に伸びているが、実質賃金は伸びているが伸び率が低い。毎月勤労統計による実質賃金について、18年がマイナスでも別に不思議ではない。

実質賃金がいつ上がるのか

   そもそも、このような数字改善の動きは、アベノミクスの問題を示すものではなく、むしろ政策の正しさを示している。マクロ経済政策では、最優先されるのは雇用だ。その次には所得が上がればいい。民主党政権時代には、雇用の確保ができなかった。就業者数は減少した。これはマクロ経済政策としては落第だ。安倍政権になってから、就業者数は激増したので、ここは及第だ。

   所得はどうかといえば、総所得は名目、実質ともに増加、平均賃金は名目は増加なので、ここまでは及第。しかし、実質賃金はイマイチだ。経済理論からいえば、景気の拡大によって、雇用量がまず増加し、それにともないながら名目総所得が増加。その勢いがよければ、インフル率を凌駕し実質総所得も増加する。

   この拡大による新規雇用の人の賃金は初めのうちは低いので、名目総所得は増えても平均的な名目賃金は上がらない。しかし雇用が逼迫して一部の名目賃金が上がりだし、それが広がり、平均的な名目賃金も増加。今のところはここだ。

   さて、実質賃金がいつ上がるのか。人手不足がさらに進み、経済成長が本格化するときだ。これまでの歴史を見ても、完全にデフレ脱却してからでないと実質賃金は上がっていない。一部の野党は、2018年のマイナスを政府に言わせたいのだろうが、それ以前も言及されると、アベノミクスの方向性の正しさとなって、薮蛇ではないか。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「ド文系大国日本の盲点 反日プロパガンダはデータですべて論破できる」(三交社)など。


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