2024年 4月 26日 (金)

佐々木すみ江、「生身の人間」演じ生涯現役 死の1か月前に渡したバトン

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舞台鑑賞から半世紀経っての出会い

   野村さんは高校卒業後、演劇部の仲間と劇団を結成するが、4年で挫折。中学の教師時代は演劇部の顧問としてかかわり続けた。60歳の定年を迎えてから、「また芝居をやりたい」と昔の仲間に呼びかけたのがいまの劇団だ。再び演劇を通じて社会に問題提起するのだと思ったとき、「セールスマンの死」の舞台が蘇ってきた。佐々木さんのことをブログに書いたのは、2015年。舞台を観てから50年近くがたっていた。

「......そういう女性像自体が、強い印象を刻み付けた要因だったのかも知れませんが、その役柄をくっきりと表現した佐々木すみ江の演技が、ほんものだと感じたのです。一人の生々しい女性が、何かを発しながら、そこにリアルに存在しているように感じられたのです」(ブログ「こむし・こむさの日々」より)

   一方、90歳になった佐々木さんも、「セールスマンの死」に引き寄せられていた。昨年11月、神奈川芸術劇場で長塚圭史演出、風間杜夫主演で上演された舞台を、佐々木さんは往復4時間近くかけて、プレビューの初日に観に行った。アーサー・ミラーの戯曲が収められた文庫を求めて、自分が言ったセリフも確認した。そんなときに野村さんのブログを知る。

   「びっくりしました。そして、うれしかった」。役者人生の最終盤に、花束を贈られたようだった。佐々木さんが「生きているうちに一度お目にかかって、お礼を言いたい」と希望して、1月19日の面会が実現した。上演前の10分間ほどの短い出会い。二人は少し照れながら言葉を交わした。楽屋を辞した佐々木さんは、「何か大きな仕事を終えたような気がする」と話していた。

   それから1ケ月後、佐々木さんは亡くなった。「でも、つながっていると思うんです」と野村さんはいう。「佐々木さんの演技には、多くの人に訴えかける広さや深さがあった。だからこそ長い間、多くの作品に出演して評価されたのだと思う。私たちが演劇で目指しているものも同じ。本当の人間を描く作品をつくりたい。『あなたの道を歩き続けなさい』と佐々木さんに勇気づけられた気がしています」。 

                                          

 (ジャーナリスト 室田康子)

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