2024年 4月 25日 (木)

インドネシア人被告の釈放は外交の勝利? 正男氏事件でベトナム人被告との「差」

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   北朝鮮の金正男(キム・ジョンナム)氏(当時45歳)が2017年2月にマレーシアで殺害された事件で、実行犯として殺人罪で逮捕・起訴されていた2被告のうち、インドネシア国籍のシティ・アイシャ被告(27)が19年3月11日に釈放され、インドネシアに帰国した。検察が同被告の起訴を取り下げたためだ。

   だが、もうひとりのベトナム国籍のドアン・ティ・フォン被告(30)の身柄は引き続き拘束されたままとなっている。インドネシア政府はアイシャ被告の釈放について「外交的努力」をアピールしており、ロビー活動の差が影響した可能性もありそうだ。

  • インドネシア国籍のシティ・アイシャ被告(中央)。検察が起訴を取り下げたため釈放された(写真はインドネシア外務省のツイッターから)
    インドネシア国籍のシティ・アイシャ被告(中央)。検察が起訴を取り下げたため釈放された(写真はインドネシア外務省のツイッターから)
  • インドネシア国籍のシティ・アイシャ被告(中央)。検察が起訴を取り下げたため釈放された(写真はインドネシア外務省のツイッターから)

インドネシアは「あらゆる2国間会談で事案について提起」

   17年に始まった公判では、検察側は2人に殺意があったと主張する一方で、2人は「いたずら動画に出演していた」「騙されており、北朝鮮の工作員に操られているとは全く分からなかった」などと無罪を主張。主張は真っ向から対立してきた。

   マレーシアの刑法では、殺人罪で有罪になると死刑が適用される。事件への関与が疑われた北朝鮮大使館員ら8人は出国する中で、仮に自国民に死刑判決が下されて執行されたとなれば、インドネシア・ベトナム両政府にとっても世論からの反発は必至。このことを背景に、特にインドネシア政府はマレーシア政府へのロビー活動に熱心に乗り組んだようだ。AP通信によると、インドネシア政府は「首脳会談、副大統領会談、外相間の定例会談、それ以外の閣僚級会談など、あらゆるインドネシア-マレーシアの2国間会談でアイシャ被告の事案について提起」

してきたという。

ベトナム人被告の起訴取り下げも要求

   インドネシア外務省は3月11日夜、帰国後に記者会見するアイシャ被告の写真つきで、

「釈放の成功はインドネシア政府の外交の取り組みによるもので、政府は全国民を守ることの証明だ」

とツイートし、成果をアピールした。インドネシアのメディアもこれに呼応。最大手紙のコンパス紙は12日付の1面トップに「シティのための総外交」と題した記事を掲載。釈放に向けたインドネシア側の取り組みを報じた。

   一方のベトナムは、2回目の米朝首脳会談を19年2月に首都ハノイで開いたこともあって、米朝に配慮した結果、インドネシアに比べてロビー活動が活発でなかったことが指摘されている。

   フォン被告の弁護士は、同被告についてもアイシャ被告と同様に起訴を取り下げるように求めている。公判は3月14日に再開予定で、検察はそれまでに対応を決めることにしており、釈放が決まる可能性もある。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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