2024年 4月 25日 (木)

被災から8年、帰還未だ877人 桜とともに「待ち続ける」福島県富岡町のいま

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家庭的な料理を、お腹いっぱい食べる

   富岡町役場から、クルマで5分も走っただろうか。富岡町総合スポーツセンターへと続く上り坂の途中に、「y」の看板が目に飛び込んできた。2019年1月に新装オープン した「Cafe Y」。切り盛りするのは、渡辺愛子さん(53)。楢葉町出身の三瓶芙歩花さん(25)がウェイトレスを務める。帰還した住民や、廃炉や復興事業にかかわる作業員らにとって憩いの場所になっている。

   いわき市で飲食店を営んでいた渡辺さんは、富岡町でご主人と床屋を営んでいた女性の、「町に戻りたい。女性がゆっくり食事したり集まったりできる場所がほしい」という言葉に突き動かされた。「私も50過ぎたら繁華街には居たくなかったので。とりあえずやってみようかなって。いわきのお店を閉めて(富岡町で)2017年に開業しました」と話す。

「ここも駐車場が砂利になっているのは、除染したからなんです。10センチ以上ですか、掘削して砂利とか山砂を入れたようです」

   そんな話をするものだから、てっきり線量のことを気にしているものだと思ったが、「いやいや線量より日常生活ですよ」という。買い物はクルマを使わなくてはならず、美容室も床屋さんも毎日空いているわけではない。高齢者には医療施設が、子育て世代は子供の遊び場所が気になるだろう。「日常」はまだ道半ばのようだ。

   しかし、少しずつ前へ進んでいると感じている。4月、町内に「ホテル蓬人館 富岡」がオープンする。 「これまでは作業員さんのための宿舎しかなかったんですが、今度やっと、法事ができたり、私たちがビジターでお風呂入ったりできる場所が開業するんです。人として生きていくには、癒しが必要だと思うので」(渡辺さん)。これも、日常を取り戻す一歩なのだ。

   原発はこれから、廃炉への道を本格的に歩き出す。8年前に事故処理の拠点となった富岡町の未来を、渡辺さんはこう想像する。

「もともと富岡町は原発に携わる人たちが集まる町でした。これからは、研究所というか大学みたいな、技術開発の施設が集積して、筑波学園都市(茨城県)のようになって、学者や技術者がいっぱい集まってくる。古くからの町民の方には申し訳ないかもしれないけれど、そういう方たちが同じ心で復興を進めてくれるんじゃないかなって思っています」
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