2019年 6月 19日 (水)

このまま「2000万円」が争点でいいのか 国民だって理解している「年金だけでは暮らせない」現実

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   老後の30年間で2000万円の貯金の取り崩しが必要になると指摘した金融庁審議会の報告書の問題では、野党は第1次安倍政権が退陣する一因となった「消えた年金」問題(2007年)の再来とばかりに攻勢を強めたい考えだ。

   ただ、野党がキーワードとして位置付ける「100年安心」をめぐってかみ合わない議論も展開されており、このまま争点化するかは不透明だ。

  • 「2000万円問題」は争点化するのか(写真はイメージ)
    「2000万円問題」は争点化するのか(写真はイメージ)

生活の「100年安心」と年金制度の「100年安心」は別問題

   安倍晋三首相は19年6月10日の参院決算委員会で、報告書について

「不正確であり、誤解を与えるものだった」

と述べる一方で、立憲民主党の蓮舫副代表は、

「不正確でも誤解でもない」

などと反論。自らの問題意識を

「今回の報告書で国民が怒っているのは『100年安心』が嘘だったこと」
「『自分で2000万円貯めろ』という、非常に無責任な国民を欺いた内容になっている」

などと説明した。

   そもそも、「100年安心」は、公明党が主導で04年に実現した年金制度改革のことを指しており、大きく(1)保険料の上限を決めて、その範囲で年金の給付水準を自動的に調整する「マクロ経済スライド」を導入する(2)積立金を100年かけて取り崩す(3)給付水準は現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)との比較(所得代替率)で50%以上を確保すること、が柱。生活が「100年安心」なのではなく年金の制度が「100年安心」だとしているに過ぎない。仮に今回の報告書に「自分で2000万円貯めろ」というメッセージが込められていたとしても、ここでいう年金の「100年安心」にどう影響するかは見えにくい。

若い世代ほど少ない「全面的に公的年金に頼る」派

   さらに、年金だけでは老後は暮らせないという認識は、国民の間で広く広まっている。例えば

「老後資金の現実 『年金+3000万円』が必要額の目安」(17年9月、日本経済新聞)

といった記事は枚挙にいとまがないし、三菱UFJ信託銀行ウェブサイトの「老後資金はいくら必要?どうやって貯める?」と題したコーナーには、

「一般的には老後資金の目安は3,000万円だといわれることもありますが、これは年金以外の収入がなくなった際に、年金だけではまかないきれない分を指しています」

とある。

   世論調査でも、その傾向が見て取れる。内閣府が18年11月に行った「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」では、老後の生活設計を「考えたことがある」と答えた人は67.8%にのぼり、そのうちの過半数にあたる55.1%が「公的年金を中心とし、これに個人年金や貯蓄などを組み合わせる」と回答。「全面的に公的年金に頼る」と答えたのは23.0%だった。これを年齢別にみると、すでに受給している70歳以上は45%で、60~69歳が23.8%、50~59歳が17.7%、40~49歳が9.2%、30~39歳が2.5%、18~29歳が6.7%。最も若い18~29歳を除くと、若くなるほど公的年金に頼ろうとする人の割合は減少している。

「財政検証」の結果次第では争点化も?

   一方で19年は、公的年金がこのまま制度を維持できるかをチェックする5年に1度の「財政検証」の年にあたる。09年は2月23日、14年は6月3日に発表されたが、19年の発表は未定。参院選まで発表されないのではないかと疑う声も出る。

   政府・与党から出る

「正式な報告書として受け取らない」(麻生太郎副総理兼金融担当相)
「この報告書はもうなくなっている」(自民党・森山裕国対委員長)

といった発言にも野党から批判が出ている。こういった状況で、給付水準の引き下げにつながるような「財政検証」の結果が出れば、年金のあり方が改めて争点化する可能性もある。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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