「1年前」「1年後」迫るのはどちら?1年後の2020年7月に開会する東京五輪に関する広告の、とある文章に戸惑う人が続出した。問題になったのは「いよいよ1年前に迫った」という表現である。「あまり聞かない表現ではありますね」広告は「TOKYO SPORTS STATION」という広告の一環で、東京五輪1年前のタイミングで山手線や東京メトロの車内に掲出されたものだった。東京メトロとJR東日本が共同で制作・展開している。そして「いよいよ1年前に迫った東京2020オリンピック・パラリンピック」という文が掲載されており、とくに「1年前に迫った」の部分に違和感がある、「日本語がおかしくないか」という意見がネットで噴出した。確かに筆者も違和感を覚えるし、「1年後に迫った」の方がより自然なのではないだろうか。専門家の見解はどうか。J-CASTニュースは、日本語学者で国語辞典編さん者の飯間浩明氏に8月1日に取材を行った。飯間氏は「正しい日本語というものはなく、人々の間で汎用的に使われているかどうかの感覚が、自然な日本語に感じるかどうかにおいて重要です」と前置きした上で、「あまり聞かない表現ではありますね」と答えた。「迫った」の主語が問題なのではないかという。「主語は迫ってくる五輪の方で、『五輪が私たちから見て1年前まで迫った』と考えると、納得はできます。ただやはり珍しい用法です」確かに2020年開催の五輪からみると2019年は1年前となり理解はできるが、2020年という将来の事柄を指すのに、「1年前」という時間が逆戻りするような表現なのが誤解を招きそうである。飯間氏は「『開催まであと1年』『あと1年に迫った』であれば自然だったと思います」とも答えた。制作サイド「不自然な表現であるとのご指摘を受けても致し方ないものであった」乗客が違和感を覚えたこの広告、当事者は不自然に思わなかったのだろうか。J-CASTニュースは19年8月1日に東京メトロに取材したところ、「ご指摘いただきました『いよいよ1年前に迫った』との表現に関しては、東京2020大会の『1年前』期間であることを、より強調してお伝えするため、広告上の表現として採用させていただきました。しかし、日本語として不自然な表現であるとのご指摘を受けても致し方ないものであったと感じており、JR東日本、広告代理店等と協議し、ポスターの差し替えを含めて検討していきます」という回答が2日に戻ってきた。(J-CASTニュース編集部 大宮高史)
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