文大統領、東京五輪を「友好と希望の源に」 8・15演説で反日世論「沈静化」図る?
韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は2019年8月15日、日本による朝鮮半島統治からの解放を祝う「光復節」の式典で演説した。
元徴用工に対して賠償を命じる判決や韓国に対する輸出規制強化の問題で18年より日韓関係が悪化したことを受けて、演説の内容が日本にとって厳しいものになるとの見方もあった。だが、実際には対日批判を抑制。徴用工問題や慰安婦問題への言及を避け、東京五輪への期待感も表明した。五輪ボイコット論を筆頭に、過熱する対日世論の鎮静化を図った可能性もありそうだ。
「安全保障」言及でGSOMIA廃棄論けん制?
輸出規制をめぐる問題では、
「日本の不当な輸出規制に対抗し、私たちは、責任ある経済大国への道を着実に歩み続ける」
といった言及があったものの、総じて日韓の協力関係に重点を置いた。
「私たちは、過去にとどまっているわけではなく、日本との安全保障・経済協力を続けてきた。日本と一緒に植民地時代の被害者の苦痛を実質的に癒そうとしてきた。歴史から学び、着実に協力しようという立場を維持してきた」
「今でも日本が対話と協力の道を選ぶなら、私たちは喜んで手を握る」
韓国では軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すべきだとする主張が相次いでおり、調査会社のリアルメーターが8月6日に行った世論調査では、47.7%が破棄に賛成し、反対は39.3%にとどまるという結果が出た。日本との安全保障分野での協力関係に言及することで、こういった世論をけん制する狙いもあるとみられる。
3大会連続の東アジア開催は「共同繁栄の道に進む絶好の機会」
20年の東京五輪についても同様だ。文氏は、18年の平昌五輪、20年の東京五輪、22年の北京五輪と3大会連続の東アジア開催になることについて
「東アジアが友好と協力の枠組みを固め、共同繁栄の道に進む絶好の機会」
だとして、
「世界中の人々が平昌で『平和の朝鮮半島』を目撃したように、東京五輪が友好と希望の源になることを楽しみにしている」
とした。
文氏は
「日本の経済報復に対する韓国国民の成熟した反応は、韓国経済を守ろうとする決意を結集する一方で、両国の国民の間の友好が損なわれることを望まない成熟した国民意識があるからだ」
とも述べ、過熱する世論に「成熟した反応」を求めた。
南北の「平和経済」で「日本を追い越す」の持論は変えず
ただ、南北間の経済協力で「平和経済」が実現すれば「一気に日本の優位性に追いつくことができる」として波紋を広げた持論は曲げていない。今回の演説でも、
「平和と統一による経済的利益が非常に大きいことは明らか」
だとして、「平和経済」に多くの時間を割いた。2022年まである任期中に
「朝鮮半島の非核化と平和体制を確固たるものにすることを誓う」
としたうえで、
「2032年にソウル・平壌五輪を成功裏に開催し、光復100周年を迎える2045年までには、平和と統一を実現した『ワン・コリア』として世界の中でそびえ立てるよう、その基盤をしっかりと整えることを約束する」
とした。その上で、統一による経済成長が
「私達が日本を追い越す道で、日本を東アジア協力という秩序に導く道」
だと主張した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)