2020年 4月 4日 (土)

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
「国民全員にPCR検査」を批判する理由 誤診断ゼロはあり得ない

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   ソフトバンクの孫正義氏が、PCR検査に100万人分無償提供したいとツイートしたところ、批判が殺到し、2時間後に撤回したようだ。

   筆者は、「簡易検査だと誤判定50万人になってしまう。カネで100億円寄付した方がいいんじゃないの」と応じた。筆者は従来から、国民全員にPCR検査をすべきとの意見を批判している。そうした主張が善意で行われているのは承知しているが、その善意はPCR検査の誤判断率が「ゼロ」という前提がある。

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誤判定が繰り返されれば、医療現場は崩壊

   PCR検査に限らず、誤判断率ゼロはあり得ないのだが、国民全員検査論者は無意識にそう思っている。実際、そうした主張をする人に誤判断率を聞いても知らない。PCR検査について、正式な数字はないために、政府関係者もはっきり言わないし、テレビなどでも言及されないのだが、誤判断の確率はだいたい3~5割との指摘がある。簡易検査だとこれをさらに上回るだろう。というわけで、筆者はツイートに「誤判定50万人」と書いたのだ。

   誤判定50万人がでると、再検査が必要になるが、再検査では簡易検査でないとしても誤判定率は1割程度は少なくともある。となると、50万人再検査しても、まだ5万人の誤判定になる。

   100万人を無作為に選ぶと、本当に感染している人はおそらく10人程度である。となると、その10人を探すために、貴重な医療資源が使われ誤判定が繰り返される。結果として医療現場が崩壊し、来院者の中には本当の感染者もいるので、感染が加速される、これが恐ろしい。そして実際に行ったのがイタリアだ。イタリアは、中国の一帯一路構想にG7の中ではじめに賛同し、中国からの来訪者も多い。しかも、日常的にハグなどで「濃厚接触」の多い国だ。そうした背景で、医療崩壊が起こってしまい感染者が中国以外では突出して多い国になってしまった。

リスクを定量的に把握する

   韓国でも似た事情で、医療崩壊が起きている。日本のテレビでは、韓国を持ち上げていた局もあったが、いまやあまり報じなくなっている。

   PCR検査の話を例えて言えば、宝くじ1、2等の確率と感染者になる確率は大差ないが、宝くじ購入者の3割に1、2等の誤当選をやったらパニックになるだろう。PCR検査を全国民にと言う人はそのくらい無責任な話だ。

   筆者は、国民全員検査論を聞いたときに、原発即時廃止論や財政破綻論を即座に連想した。何を言っているのかと思われるが、それは以下の通りだ。これらは、これらは原発リスクや破綻リスクは「ゼロではない」を「大きい」と誤変換したものだ。ひとたびリスクが「大きい」と思い込むと、即原発廃止、即増税と条件反射になる。

   国民全員検査論は、検査の誤判断のリスクを「ゼロ」と思い込んでいるから、検査すべきとなる。国民全員検査論も、原発即時廃止論や財政破綻論も、ともにリスクを定量的に把握できず、「ゼロ」と「大きい」の定性的な理解しかできない人の論だ。検査の誤判断のリスクを定量的に「3~5割」と理解できれば、国民全員検査論にはならないはずだ。

   冒頭の孫正義氏はおそらく善意なのだろう。であったら、簡易PCRよりも、100億円をワクチン、特効薬開発に寄付するほうがより社会のためになるだろう。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「韓国、ウソの代償」(扶桑社)、「ファクトに基づき、普遍を見出す 世界の正しい捉え方」(KADOKAWA)など。


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