2020年 9月 28日 (月)

岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち 
コロナでニューヨークのマスク事情も一変

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対策の見本は、日本ではなく、韓国のワケ

   WHO(世界保健機構)は、感染者と接触する人や、咳やくしゃみなどの症状のある人にだけにマスク着用を勧めている。さらにきちんと使い方を守り、アルコールや石鹸で何度も手洗いしなければ、効果はないとしている。

   マスクが不足している現状で、まずは医療関係者に回すべきとの意識も強い。

   米国のマスコミは国民に対して、「最も必要としている医療関係者の手に渡るよう、マスクを買わないように」と呼びかけている。

   ワシントン州シアトルでは、市内の「Target」の店舗で医療用マスク「N95」が店頭販売されているとの通報を受け、州知事が販売を中止させた。

   同社は、「これは誤って店頭に置かれたもので、撤去して保健局に寄付します」とし、「さらに寄付できる在庫を確認しています。我々のコミュニティに対するコミットメントは揺るぎないものであり、陳謝します」と述べた。

   マイク・ペンス副大統領も、「予防のためにマスクを買う必要はない」と言い切った。

   米国で、コロナウイルス対策の見本とされているアジアの国は、日本ではなく韓国だ。

   「日本のこれまでの検査総数は、韓国の8分の1だ。予定どおりにオリンピックを開催するために、感染者数が多くならないよう意図的に検査数を制限しているのではないか」と批判されている。

   こうした記事に対して、日本に滞在経験のある人を中心に、「日本では以前からマスクをする習慣がある」、「日本は清潔な国で、衛生観念がきちんとしている」、「他人への配慮がある文化だ」などといった声も多い。

   韓国政府は、2015年にMERS(中東呼吸器症候群)が猛威を振るった時の反省から、その教訓を生かし、以前から検査体制を整えていたと報道されている。しかし、検査では陽性でも陰性、あるいはその逆と出ることもあり、その信頼度について疑問の声も上がっている。

   マスク着用がコロナ対策にどの程度、効果があるかはわからないが、しないよりした方がよいと信じて、私はニューヨークでは二枚重ねて着用している。

   米国では「social distancing(社会的距離の確保)」、「6 feet(約1.8m)」が合言葉になっている。地下鉄や公園でも、人々は距離を置いてすわっている。

   正面に「Trump Palace」と書かれた建物の前で、たまたまその近くに住む白人女性2人と立ち話した。「この建物も、トランプの所有かしら」と尋ねると、「Yes. Our fearless leader, Trump(そう。恐れを知らない我々のリーダー・トランプよ)」と拳を振り上げて言う。

   トランプ支持者かと思ったら、「とんでもないわ。トランプはコロナウイルスは、大したことないなんて言っていた。あいつのせいで、こんなことになったのよ」と怒りをぶつけた。

   ふたりはそろって、両手に薄い半透明のビニール手袋をはめていた。1人が言った。

「夫の介護で使った手袋が、残っていたのよ。スーパーのドアやカートに、素手で触れたくないもの」

   2人は足早にスーパーに消えていった。「Stay safe.(安全にね。気をつけて)」と言いながら。

   これも今や、合言葉になった。(随時掲載)

++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

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