2020年 8月 12日 (水)

YouTube著作権「虚偽申請」の闇 赤の他人が収益をかすめ取る...その手口とは?

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   YouTubeに自作のカバー動画を投稿したら、謎の団体から著作権侵害とのメールが――。

   他者の投稿した動画に対し、その著作権者を偽って名乗り、不当に収益をかすめ取ろうとする手口が相次いでいる。なぜこんなことが可能なのか、そしてその対策は。現場の声を探った。

  • YouTubeの著作権処理の隙をついた手口か
    YouTubeの著作権処理の隙をついた手口か
  • YouTubeの著作権処理の隙をついた手口か

VTuberも被害に...J-CASTが聞いた

   J-CASTニュースの取材に応えたのは、VTuberとして活動する「朝ノ瑠璃」さん。6月19日、投稿したMV(ミュージックビデオ)に著作権の権利団体を名乗る団体から申請が入り、不正に収益が流れているという被害に遭った旨のツイートをしていた。

   朝ノ瑠璃さんはアニメ「ひぐらしのなく頃に」から「why, or why not」をギターアレンジでカバーし、YouTubeに投稿した。この曲はJASRACが著作権を管理しており、JASRACはYouTubeと利用許諾締結を結んで権利を処理しているため、ユーザーがJASRACに個別に利用許諾を得る必要はない。

   ところがこれを投稿したところ、すぐに著作権を主張する通知が来た。通知があったのは6つの団体からであった。

   通知には「(団体名)さんが所有またはライセンスを所持しているコンテンツが含まれている可能性があります。引き続き YouTube には表示されますが、一緒に広告が掲載される可能性があります。」という文面がある。

   これがあると動画に広告が表示され、その収益が著作権を主張してきた団体に入る仕組みになっている。本来は権利関係を持たないにもかかわらず、勝手に主張してきた団体に収益が入ってしまうのである。

   これらの団体名をネットで検索すると、同様の被害に遭ったとの報告が多数寄せられている。中には実在する海外の著作権団体と同じ名称を名乗るものもあるが、いずれも活動実態は定かでない。

   朝ノ瑠璃さんの周りでも同様の体験談があったそうだ。「異議申し立てをすると却下される、最悪の場合チャンネルがBANされてしまうこともあるらしく、推測ではありますが、泣き寝入り状態の方もいらっしゃるかと思います」と推測しており、YouTube側の対応が後手後手なのではないかと指摘する。

弁護士に話を聞いた

    なぜこのような手口が可能なのか。弁護士でYouTubeチャンネルも開設している弁護士法人ATBの藤吉修崇弁護士に、ネット上の著作権運用について取材した。

   まず著作権とは何なのか。藤吉弁護士は、

「そもそも著作権というのは、著作物を自分しか扱えないという権利、人にやめろと言える権利です。たとえば、複製権というものがありますが、これは著作物と同じものを作ること(たとえば本をコピー機でコピーをしたり)は本来著作権者しかやってはいけなく、無断でやった人にやめろと言える、これが著作権です」
「カバー動画を作成した時点で、音楽に加えて歌詞がある場合は歌詞の複製権を侵害します。また、YouTubeにアップした場合は、音楽と歌詞の公衆送信権もしくは公衆送信可能化権を侵害することになります」

   と解説する。本来はどんな楽曲でも勝手に演奏しアップロードすれば諸権利の侵害となるが、YouTubeでは「一定数の曲は著作権の団体(JASRACなど)が管理しており、その主要団体はYouTubeに使用の許諾を包括的に行っていて、YouTubeの収益を受け取れるような仕組みがすでにできあがっております」(藤吉弁護士)。

   しかし、こうして一括して権利処理されるグループに含まれなかった楽曲が多数ある。それらについては「著作権者のできる方法がYouTube上定められており、それは1:放置する、2:収益をもらう、3:削除してもらうということになるのです」という。この時、実際は権利者でなくとも権利団体を名乗って収益をかすめとることができてしまうのだそうだ。それが前出のような虚偽申請というわけだ。

    そして藤吉弁護士によれば、毎日無数の動画が投稿されるYouTubeでは、それらが正当な権利団体によるものかチェックする余裕がない。この「オペレーションの限界」により、問題が生じていると指摘した。動画投稿者もYouTube側も、申請をしてきたのが正当な権利団体かどうか確かめる余裕がなければ「やりたい放題」になりかねない。

    しかし藤吉弁護士は「虚偽の申請をして広告費を得る行為は詐欺行為です」ときっぱり指摘する。詐欺罪として訴えられる余地もあるとのことだ。

Content IDの悪用を監視

   YouTubeを運営するGoogleではどんな対応をとっているのか。Google日本法人に取材を行うと、「Content IDの不正使用対策」という形で、虚偽申請に対応しているという回答があった。

   Content(コンテンツ)IDは著作権者が自分のコンテンツを保護するためのツールで、YouTubeにアップロードされた動画を、著作権者が登録したファイルのデータベースと照合しスキャンする。無断でアップされた権利動画に対しては、藤吉弁護士が指摘したように収益を受け取ることが可能だ。

   しかし、本来の著作権者ではない集団がこれを悪用すれば、前出の朝ノ瑠璃さんが被害にあったように、動画投稿と同時に虚偽申請ができてしまう。これにGoogle側は、

「このようなツールの使用状況を常時確認し、著作権システムの乱用を防ぐための専任チームを設けています。このチームは、ツールの不正使用を調査し、コンテンツがブロックされる前に不正確な主張を防止し、検出された場合にはコンテンツIDから不正な参照ファイルを削除します。システムを繰り返し悪用した場合、YouTubeは特定の著作権ツールへのアクセスを取り消す場合もあります」

   と答えている。

   虚偽申請を行ったユーザーをYouTubeが告訴した事例もあり、手口はネットユーザーの間で認識されつつある。とはいえ、現状では「いたちごっこ」の感が否めない。

   前述の朝ノ瑠璃さんはこう憤る。

「原曲のアーティストさんへのリスペクトをしっかり持ち、きちんと権利面を調べた上で歌ってみた動画を出しているため、その収益がアーティストさんや権利者さんではなく、不正団体と共有されているというのはとても悔しいです」
「取り締まれないほどに増えてきたのかもしれませんが、リスペクトをもって動画を投稿し、本家アーティスト様へ還元するのではなく、人のふんどしで相撲をとる輩が存在することはただただ残念でなりません」
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