2021年 3月 5日 (金)

周庭氏逮捕で考える「香港の今」と日本メディア

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   香港の民主活動家・周庭(アグネス・チョウ)氏(23)が香港警察に逮捕されたことが、日本のメディアやSNSで大きな話題になっている。一方で、「周氏以外の、逮捕されている多くの民主派への支援も忘れないで」と訴える声も上がっている。

「日本の大手メディアが『#FreeAgnes』に注目 ネット民のホットトピックに
  • 周庭氏の公式フェイスブックアカウントから(画像は2020年7月12日の投稿)
    周庭氏の公式フェイスブックアカウントから(画像は2020年7月12日の投稿)
  • 周庭氏が語っていた「日本への思い」(画像は周庭氏23歳誕生日の投稿、一部加工)
    周庭氏が語っていた「日本への思い」(画像は周庭氏23歳誕生日の投稿、一部加工)
  • 周庭氏の公式フェイスブックアカウントから(画像は2020年7月12日の投稿)
  • 周庭氏が語っていた「日本への思い」(画像は周庭氏23歳誕生日の投稿、一部加工)

香港ではメディア本社への家宅捜索に大きな注目

   これは香港のネットニュースメディア「Stand News(立場新聞)」が2020年8月11日朝に配信した記事の見出しだ。周氏が、日本語が堪能なため日本メディアのインタビューによく応じていたことや、日本人に「民主の女神」と称されていたこと、10日夜の逮捕後にハッシュタグ「#FreeAgnes」が日本のツイッターユーザーのホットトピックになったことも、紹介されている。

   日本のテレビ局の香港支局で助手として働いていたことがある香港人の女性(30代)は、「当局に目を付けられたくないので」と、J-CASTニュースの取材に匿名で応じ、こう解説した。

「香港では、中国に批判的な論調で知られる新聞『リンゴ日報』の創業者・黎智英氏が逮捕されたことと、リンゴ日報が警察の家宅捜索を受けたことが一番大きく報じられています。『報道の自由』への明らかな侵害ですから当然です。周さんはあくまで10日に逮捕された6人の1人という位置づけですね。なので、香港メディアは、日本メディアが周氏をことさら大きく取り上げることを興味深く感じているようです」
周庭氏の公式フェイスブックアカウントから(画像は2020年7月12日の投稿、一部加工)
周庭氏の公式フェイスブックアカウントから(画像は2020年7月12日の投稿、一部加工)

   この女性は、働いていた日本のテレビ局が香港から撤退したことから金融系の仕事に転職。同じ頃、他の新聞社やテレビ局も相次いで香港から撤退した。それもあってか、香港の最近の事情や19年からの民主化運動に詳しい日本のジャーナリストが少なくなったと感じている。

「香港返還から20年以上経ち、上海や広州、深圳など他の大都市の方がニュース価値も高くなったので、香港からの撤退は仕方ないでしょう。それにしても、香港で今起きている、民主派や親中派、そして様々な考えの人たちの『分断』、この街を舞台に繰り広げられている中国と欧米諸国の『情報戦』などを、周さんのことばかりではなく、もっと広く深い視点で世界に発信してもらいたいです」

「あなたの知らない、周さんの仲間も助けてください」

   ツイッターでは、周氏逮捕に関する驚きの投稿があふれる一方、違和感を訴える人もいる。

「逮捕されたのは周さんだけじゃない。あなたの知らない誰かさんも逮捕されてる。(中略)あなたの知らない、彼女の仲間も助けてください」
「表面的には『全員がヒーローだ』的な発言を繰り返しつつ、結局、ありきたりの視線で、特定の人物だけにスポットライトを当ててしまう。とりあげるのはいいけれど、スポットライトは止めよう」

   一方、日本のある民放の男性記者(30代)は香港に何度も出張して民主派のデモなどを取材してきたが、苦しい胸の内をこう明かす。

周庭氏が語っていた「日本への思い」(画像は周庭氏23歳誕生日の投稿、一部加工)
周庭氏が語っていた「日本への思い」(画像は周庭氏23歳誕生日の投稿、一部加工)
「私は香港には詳しくないけど、中国語はできるので、記者としてもっと丹念に取材したい思いはあります。でも民主派の若者らは当局の摘発を恐れて、なかなか顔を出して取材に応じてくれず、テレビとしてはとてもやりにくい。そんな中で、周庭さんは流暢な日本語で取材に応じてくれるので『便利』ですし、本社からも『視聴率が上がるから周さんを撮れ』と指示されるので、複雑な思いです」

   周氏の逮捕容疑の詳細は不明だが、周氏の公式フェイスブックでは11日未明、「外国勢力と結託して国家の安全に危害を加えた罪」に問われたと公表している。前述の香港人の元助手はこう話す。

「周氏が日本メディアやSNSで支援を訴えていたことが『外国勢力と結託』とされていた可能性があります。彼女は直接、日本に対中制裁や敵対行動を求めた訳ではないと思いますが、今の香港警察、中国共産党は何に『因縁』を付けてくるか予想できません」
香港の街並み
香港の街並み

   周氏の日本語での発信と日本メディアや日本のSNSユーザーの彼女への関心ばかりが、香港警察や中国共産党を警戒させたわけではないだろう。自戒を込めて書くが、「隣国」のメディアとして私たちに求められているのは、香港で今起きていることを、深く、多角的に分析し、日本のユーザーに「我がこと」として伝え続けることだろう。

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