2021年 3月 1日 (月)

としまえん閉園の心理描写 「エモさ」は主観か、客観か【ネットメディア時評】

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   東京・練馬区の遊園地「としまえん」が閉園した。

   94年にわたる歴史もあって、新旧メディアを問わず、その終焉を伝えた。なかには、感情を揺さぶる「エモい記事」も数多い。今回は、そんなネットメディア記事に焦点を当ててみよう。

  • あしたのジョーを起用した「閉園広告」も話題に(9月1日、西武某駅で筆者撮影)
    あしたのジョーを起用した「閉園広告」も話題に(9月1日、西武某駅で筆者撮影)
  • あしたのジョーを起用した「閉園広告」も話題に(9月1日、西武某駅で筆者撮影)

行ってみた、座談会、スタッフの半生...

   王道の「行ってみた」で攻めたのは、ロケットニュース24。としまえんの公式キャラクター、豚の「カルーセルちゃん」に編集部員5人が扮して訪問した。サイト創設者Yoshio氏(練馬出身)が「初体験」(あひるねこ記者)、「幼い頃に1度だけ遊びに来たことがあるようなのだが、正直その時の記憶は1ミクロンもない」(P.K.サンジュン記者)といったメンバーも引き連れ、閉園日(2020年8月31日)の盛況ぶりを伝えている。初訪問ならではの「気づき」が、エモさに新鮮味を添える。

   体験ではなくて、記憶に忠実だったのは、デイリーポータルZの「ありがとう『としまえん』!みんなで思い出を語り合った」。北村ヂンさんを進行役に、練馬出身のウェブマスター・林雄司さんらが、座談会形式で語る。現役アトラクションのみならず、アフリカ館(1998年閉館)にも触れ、思い思いの「あの頃のとしまえん」を振り返っていた。

   これらが「主観型のエモ記事」だとすれば、エピソードを紡いだ「客観型のエモ記事」もある。朝日新聞のウェブメディア「withnews(ウィズニュース)」では、運営スタッフの半生をたどった。

   勤続40年の事業運営部長は、カルーセルエルドラドをめぐる「ある事件」を紹介。乗り物のメンテナンスを36年間続けてきたスタッフは、閉園を前にした複雑な思いを吐露する----。

   これらの記事を手がけたのは、練馬出身の中井なつみ記者。取材記事とは別に、成人式やアルバイトも経験した、としまえんへの思い出をコラムとして出している。地元住民と記者目線での「書き分け」を見比べるのも面白い。

事実を淡々と伝えた「地元ウェブメディア」

   事実を淡々と、かつコンスタントに報じたのは「練馬経済新聞」。みんなの経済新聞ネットワーク(みん経)に加盟するニュースサイトで、「広域練馬圏」の情報を伝えている。地元住民の立場から、いくらでも「エモく」できたはずだが、

としまえんで最後の週末 閉園を惜しむメッセージ集まる」(8月30日)
としまえん、今日閉園へ 『ついにこの日が』最後の別れに多くの来場者」(8月31日)
ありがとう『としまえん』 94年の歴史に幕」(同日)

といった記事は、極めてオーソドックス。アクセスランキングは、関連記事一色となった。

   かくいう筆者も「としまえんっ子」だった。大人になってからも、アイススケートですりむいたり、フライングカーペットで力みすぎて足がつったり、いろいろお世話になってきた。コロナ禍もあって、閉園発表後に行くのは諦めたが、ウェブ記事をめぐると、追体験できた気がする。

   折しも昨今、ウェブ記事への筆者感情の織り込み方が、話題になっている。ポリティカル・コレクトネス、コンプライアンス、そして正義感......。そうした世情のアレコレを一切考えなくてすむ、としまえんの「エモ記事」は、残暑のちょっとした清涼剤になった。

(J-CASTニュース副編集長 城戸譲)

【J-CASTネットメディア時評】
いまインターネットでは、なにが起きているのか。直近の出来事や、話題になった記事を、ネットメディアの「中の人」が論評します。

城戸譲 J-CASTニュース副編集長
1988年、東京生まれ。大学でジャーナリズムを学び、2013年ジェイ・キャスト新卒入社。Jタウンネット編集長などを経て、18年10月より現職。「ニュースをもっと身近に」をモットーに、政治経済からエンタメ、生活情報、炎上ネタまで、真面目とオモシロの両面で日々アンテナを張っている。ラジオとインターネットが大好き。(Twitter:@zurukid

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