2020年 12月 1日 (火)

「お葬式」の変革、コロナ禍で加速 QRコードで「香典渡し」、遠方・海外から「リモート参列」...最新事情を探る

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   新型コロナウイルス禍は、故人との最後の別れのあり方も変えた。葬儀は高齢者の参列が多いうえ、通夜振る舞いや精進落としなど酒食の場での感染リスクが高いためだ。コロナ禍で葬儀は小規模・簡素化を余儀なくされ、葬儀会社は「リモート葬儀」も推し進める。一方、地方で執り行われた葬儀の中には都市部から遺族らが参列することを見送ったケースも。変容する葬儀のあり方を探った。

   東京都江東区の自営業・山中雅寛さん(64)は2020年8月下旬、故郷の広島県三次市で執り行われた叔父(当時85)の葬儀に参列した。新型コロナウイルスの感染防止のためもあり、葬儀は家族葬でこぢんまりと執り行われた。参列者の大半がマスクを着用し、会食こそあったが感染防止のため会話も控えめだったという。

  • コロナ禍で、葬儀に参列する高齢者の「3密」を避けるため、様々な変化が起こっている(写真は公益社提供)
    コロナ禍で、葬儀に参列する高齢者の「3密」を避けるため、様々な変化が起こっている(写真は公益社提供)
  • 「リモート参列サービス」の準備をする公益社の職員(公益社提供)
    「リモート参列サービス」の準備をする公益社の職員(公益社提供)
  • コロナ禍で、葬儀に参列する高齢者の「3密」を避けるため、様々な変化が起こっている(写真は公益社提供)
  • 「リモート参列サービス」の準備をする公益社の職員(公益社提供)

東京から参列、「地元の会葬者は嫌がる」と断られ・・・

   ただ、その中に、東京に住む叔父の長男一家はいなかった。長男が勤める上場企業から欠席するよう求められたという。理由は「会社の都合」ということだったが、山中さんは「(コロナの『第2波』で感染者が急増していた)東京から行くと迷惑がかかるし、万が一でも感染させてしまったら会社の責任も問われかねない、と考えたのでは」と推測する。山中さんは言う。「最後の挨拶もできぬまま火葬されてしまうなんて...。残念です」

   東京都品川区の会社員の男性(49)は8月中旬、岩手県内で暮らしていた父の葬儀(当時81)に参列しようとしたところ、喪主の兄(52)から帰省を控えるよう頼まれた。「東京から来るとなると、地元の会葬者は嫌がる。申し訳ないが、また(コロナが)落ち着いたら身内だけでお別れ会をやろう」などと、メールと電話で伝えられたという。

   男性の兄は葬儀の様子をスマートフォンでビデオ撮影し、後日送ってくれた。男性は動画を見て、多くの父の友人や地元の関係者が参列し、和やかな雰囲気で葬儀が行われたことに安心した。それでも、自分が父と最後の別れができなかったことに、悔いが残る。

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「岩手は最近までコロナの感染者がおらず、しかも私の地元は山間部なので、今でも東京など都市部から来る人への警戒心が解けないそうです。仕方がないことはわかっているのですが、そこまで過剰に構える必要があるのかと思います」

   こうした傾向は地方で行われる葬儀だけの傾向ではない。大手葬儀会社「公益社」によると、コロナ禍で、同社が主に展開する首都圏と近畿圏の直営葬儀場で行われた葬儀でも、遠方に住む親類が参列を控えたり、遺族側も遠方の親類に控えてもらったりするケースが多いという。

スマホ越しでお礼の言葉、ご遺体にお別れも

   葬儀では一般的に、通夜の後に通夜振る舞い、翌日の葬儀(告別式)後の精進落としと、遺族や参列者が会食をしながら親密に会話する機会が多く、参列数が多ければ「3密」になるリスクも高い。高齢化によって死亡年齢が高まり、遺族や参列者の年齢層も高い傾向がある。そのため、新型コロナウイルスの感染が拡大した後は、参列者数を絞ったり、会食を無くしたりする例が増えているようだ。

   公益社では感染予防のため、葬儀場内の消毒や受付など各所へのアクリル板の設置、職員のマスク着用などを実施。さらに、「ソーシャルディスタンス」を意識して広めの会場で席を最低1メートル離して配置したり、会食はビュッフェ形式をやめて1人ひとり個別に食事を提供したりするなどの対応をとっている。

「リモート参列サービス」の準備をする公益社の職員(公益社提供)
「リモート参列サービス」の準備をする公益社の職員(公益社提供)

   また、葬儀への「リモート参列サービス」も7月から導入。Wi-Fi機器や三脚などの関連機材を無料で提供し、遺族らが用意したスマートフォンやタブレットを使って葬儀の様子を撮影、中継、配信している。

「4月に緊急事態宣言が出たあと、アメリカに駐在していた男性が移動制限でお父様の葬儀のために帰国・参加できないことがありました。そこで、(iPhoneの無料ビデオ通話アプリ)FaceTimeで中継して、アメリカから『参列』していただいたのです。これをきっかけに、サービスとして導入することになりました」(公益社の広報担当・土井佐季さん)

   遠隔地にいたり発熱したりして葬儀に行けない関係者と、「リアル」で参列する遺族らとがFaceTime、Zoomやラインなど様々なビデオ通話アプリでつながることで、「参列」することができるようになる仕組みだ。遺族側に頼まれれば、職員が撮影などを手伝うこともあるという。

「スマホ越しで会葬者にお礼の言葉を述べる方もいれば、ご遺体にお別れの言葉をささやかれたり、式の後に遺族同士で会話されたりと、色んな使い方をしていただいています」(公益社の土井さん)
公益社提供
公益社提供

   公益社が扱う葬儀の件数自体はコロナ後もあまり変わっていないが、参列者が少なくなり、会食などの発注も減ったため、20年4~6月の売上高は前年同期比でマイナス18.6%と悪影響があった。特に、公益社が強みを持つ社葬がほぼ全て延期または中止となり、金額ベースで前年同期比より約80%の減収となったという。

葬儀の構造的変化はコロナ前から...オンライン化定着するか

   さらに葬儀の「オンライン」化を進めたサービスも。さいたま市の葬儀会社「セレモニー」は、葬儀の中継だけでなく、供花の受け付けや香典の預かり、返礼品の注文まで、全てオンラインでできる「スマートセレモニー」を6月から始めた。8月末までに500件ほどの利用があったという。

   このサービスでは、喪主がウェブ上に専用ページを設け、訃報をメールやラインで配信するほか、弔問、会葬、供花、弔電、香典、返礼品など、それぞれの受け付けページに案内する。香典や供花はクレジット決済で受け付ける。「リアル」に葬儀場へ行く場合は、事前にQRコードで記帳と香典渡しを済ませることで、着いてから会場で列に並ぶ必要がなくなる。

「スマートセレモニー」では、事前にQRコードで記帳と香典渡しを済ませることができる(セレモニー提供)
「スマートセレモニー」では、事前にQRコードで記帳と香典渡しを済ませることができる(セレモニー提供)

   葬儀はリアルタイムでの中継に加え、喪主からのお礼を伝える動画やメモリアルムービーを配信することもできる。会葬者は香典返しをウェブ上のカタログから自分で選んで受け取ることができる。セレモニーの広報担当者はこのサービスのメリットを説明する。

「利用者からは『子どもが小さいので参列できず一緒に中継を見ながら(亡くなった)祖母を偲ぶことができた』『老人ホームでお亡くなりになり、一緒に入居していた方々に向けてライブ配信し、大変喜ばれた』など、様々な事情から実際のご会葬がかなわない方に喜んでいただいています」
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   こうした葬儀のオンライン化は今後も定着するのか。高齢化で死亡年齢が高くなって「現役時代」の関係者の参列が減ったり、都市部を中心に近所付き合いが減って町内会などの参列者が少なくなったりと、コロナ前から葬儀をめぐる構造的な変化は起き始めている。葬儀業界のビジネスモデルはどうなるのか。

   公益社の広報担当の土井さんは「近年は家族葬や少人数での葬儀が多くなる傾向が強まっていました。私どもも、葬儀そのものだけでなく、遺品整理や相続、遺された方のケアなど、葬儀後も含めたサービスに力を入れています。葬儀のあり方も変化していくと思われます」。

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