2024年 4月 25日 (木)

「負け犬」論争から17年 酒井順子さんに聞く女性たちの「あの頃」と「今」【インタビュー】

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当時は、まだそれほどきちっと考える人は少なかった

――酒井さんが振り返ってみて、なんであんなに騒ぎになったのかと思いますか?女性自身が気にすることもあるし、周りの人が反応することもあると思うんですけど。

酒井:当時、昔であれば結婚して当たり前という年齢になっても、結婚していない女性がたくさんいたけれど、その人達に対する名付けが行われていなかったので、存在がはっきり見えていませんでした。大昔だったら、例えば、「お局様」とか「嫁かず後家(ごけ)」とか「オールドミス」とか、マイナスイメージが強い言葉を、その当事者ではない他の人たちが使用していたと思うのですが、「負け犬」というのは、当事者が言い始めたというところがまず目新しかったのだと思います。「私たち負け犬は」みたいな感じで、自虐を交えて自称するようになったのだけれど、それを快く思わない当事者もいたということでしょう。「勝ち」「負け」で語る問題なのか、と。後は、本人たちも、一方で、結婚していない娘や息子を持つ親御さんたちからの反響も大きく、当事者だけでなく家族を含めた問題であるということに、本を出してから気づきました。

―― 30歳というのは、当時としては、今と違ってタイムリミットを自覚するような年齢だったからなんでしょうか?

酒井: 特にそういうことではないと思います。出産に関していえば、学校の授業などで、幾つになっても産めるわけではないということは習っているわけで、そういうのは頭にあったと思います。とはいえ今の若い人たちよりも、そのあたりの人生設計に関しては、若いころからしっかり考えていなかったところがありますね。妊娠・出産に関しての知識も広がってきたので、今は学生時代から「出産・子育てがしやすい仕事について、何歳までに結婚して、何歳までに第一子を産んで」みたいに計画的に考える人が増えてきたと思うんです。「負け犬...」を出した当時は、まだそれほどきちっと考える人は少なくて、自分を含めて「どうにかなるんじゃないか」と流されるままに生きていく感じの人が多かったですね。

――長引く不況や少子化が進み、経済が停滞している中で、未婚女性に対して生産的でないと親以外の周りの人たちからの風当たりが強かったりしたんですか?

酒井:「結婚はしないの?」とか「子供は?」とか、周りからの外圧のようなものは当時はありました。今はそういうことは言っちゃいけないという空気が強くなってますけれど。人によっては抵抗があったかと思いますが、当時はそれに対して堂々と反論する空気は薄かった。ただ、その手の外圧があったからこそ結婚して子供を産んだら案外よかった、という人がいるのも事実です。

―― 当時は、「セックス・アンド・ザ・シティ」など負け犬のようなヒロインの海外ドラマがヒットしてしましたが、輸入文化の影響もあったのでしょうか?

酒井: 海外ドラマを見て、私たちのことが描かれていると思った人は多いでしょうし、その後、日本でもその手のドラマが増えてきて、特に東京などの都市部においては、独身者が生きやすい環境が整ってきたと思います。
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