2024年 4月 25日 (木)

岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち 
対立する両派が信じる「自分たちこそ真の愛国者」

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「暴力を起こさなければ声を聞こうとしない」のは双方同じ

   結果的に暴力は負の影響しか与えないものの、トランプ支持者の一部には、「今回の議事堂乱入事件を非難する人たちは、BLM抗議デモ参加者のごく一部が起こした略奪や暴動について、どう考えているのか。暴力を起こさなければ、誰も自分たちの声を聞こうとしない、という点では同じなのではないのか」と主張する人もいる。

   これについて、ネディーンはこう答える。

「トランプ支持者たちが大統領選挙は『不正』だと言い張っているのは、『幻想』に過ぎない。でも黒人差別は『幻想』ではなく『現実』なのよ。一緒にするのは、間違い。私自身は抗議デモでも暴力は奮わない。でも、言葉ではすべてのトランプ支持者を激しく非難するわ。白人至上主義者であり人種差別主義者でありファシストのトランプのような人間を支持する人は、支持する理由が何であれ、その人自身が白人至上主義者、人種差別主義者、ファシストであって、私の存在を否定している人だから」

   バイデン氏が大統領に就任すれば、トランプ氏が設置したフェンスはいずれ取り除かれるだろう、とネディーンはいう。

   その時までネディーンたちは、ここでフェンスを守り続けるつもりだ。

   この連載の前回の記事の最後で、民主党支持者が愛する「民主主義」という言葉を、トランプ支持者たちも集会や行進でよく口にしていた、と私は書いた。

   今回の記事でも、トランプ政権は「独裁」で「自由を奪う」とアンティファの女性が語るように、トランプ支持者の多くも、民主党が政権を握ると「中国のような独裁国家になり、自由を奪われる」と恐れている。

   そして民主党支持者もトランプ支持者も、ともに「自分たちこそ、真の愛国者」だと信じているのである。

(随時掲載)

++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

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