2021年 9月 25日 (土)

「劇場版FGO」アニメ制作会社が下請法違反、公取が指導 「被害」の作画監督が実名告発「あまりにひどい状況」

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   アニメ制作会社「Signal-MD」(シグナル・エムディ)が、公正取引委員会から下請法違反で指導を受けたことが2021年1月28日、分かった。同社の親会社「IGポート」が取材に明かした。

   IGポートは「改めてコンプライアンスを徹底し、法令等を遵守した健全な経営に努めて参ります」とコメントしている。

  • Signal-MD公式サイトより
    Signal-MD公式サイトより
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「下請法の肝の部分」に抵触

   シグナル・エムディは14年設立。『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 前編』『はなかっぱ』『プラチナエンド』などの制作を手がける。

   親会社はジャスダック上場企業のIGポートで、「プロダクション・アイジー」「ウィットスタジオ」など複数のアニメ制作会社を傘下に持つ。

   指導は1月19日付。下請法第3条第1項では、親事業者は下請け事業者に対し、委託内容を記した書面(いわゆる3条書面)を交付する義務があるが、これに違反した。

   公取委下請取引調査室の担当者は27日、J-CASTニュースの取材に「個別事案の詳細については答えられない」としつつ、「3条は下請法の肝の部分です。注文したら必ず所定の事項を記載した注文書を出してくださいという話です。そこが守れていないというのが第3条1項の規定に違反する行為が認められたということです」と話した。

   公取委に違反の事実を指摘したのは、アニメーターの久高司郎さん(55)。「ルパン三世」「ポケットモンスター」「妖怪ウォッチ」などの人気作に関わった。

プロデューサーから「お前切るぞ」

   久高さんによれば、シグナル・エムディから打診され、19年11月から30分のアニメ番組の制作に作画監督として携わった。

   36万円の契約を口約束で結び、前金として18万円を受け取ったものの、残りの額はいまだに支払われていないという。12月末に担当のプロデューサーに請求書を送るも、受け取りを拒否された。

「私もうっかりしていた面はありますが、アニメーション業界では口約束が多いこともあって書面で契約を結んでいませんでした。あまりにもひどい状況になっているので最近では書面で見積もりを出してもらうようにしていたのですが、立場的には圧倒的に向こうが上で、当時はお金に窮していたこともあり口約束で二回払いで呑みました」

   アニメ関係者からなる日本アニメーター・演出協会の「アニメーション制作者実態調査2019」によれば、「必ず契約書を取り交わしている」と答えたのはわずか13.9%で、「時々取り交わしている」が31.4%、「まったく取り交わしていない」が36.4%だった(382人回答)。受注側としては「基本的には取り交わしたいと思う」「取り交わしたい仕事もある」が合計85.6%に上る(312人回答)。

   久高さんは、プロデューサーから支払いを拒んだ理由を「あまり仕事をしていないから」「成果を見せてからにしろ」と説明されたという。

   久高さんの仕事は、多くのアニメーターが書いた数千枚の原画をチェックし、修正を加えるというもの。12月までは上がってくる成果物が少なく、「シグナルさんの方でもマネージして、私のところに持ってきてもらわないと仕事にならないので、『お互い様じゃないですか』と交渉しましたが、怒気をはらんだ口調で拒まれました」

   放送は21年春の予定でスケジュールにも余裕があるため、1月末には法事で帰省すると、プロデューサーから電話で「こっちが期待している進行状況になっていない」「お前切るぞ」と凄まれた。

   その後も、制作担当を通じてプロデューサーから「2月いっぱいに仕事が終わらなければ、全部取り上げて一銭も払わん」と言われるなど、久高さんは我慢の限界に達した。

「本当辛いんですよ、この仕事で食っていくのは」

   これ以上耐えられず、プロデューサーに外部機関に相談すると伝えると、「勝手にせえよ」と返答があり、久高さんは20年2月、労基署に紹介された中小企業庁の「下請かけこみ寺」に相談した。公取委が調査に動き、翌21年1月25日にシグナル・エムディを指導した旨が書かれた通知書を受け取った。

   その時の心境を「私のような一介の個人事業主が告発しても指導は入るまいと半ば諦めていました。通知書を受け取った時は思わずウッときました。本当辛いんですよ、この仕事で食っていくのは」「(今回の件でアニメ業界の悪しき慣習が是正されると)大変嬉しいです。後輩や同輩たちに被害が及ばないようになってくれれば」と語る。

   今後の仕事への影響も考慮し、久高さんには匿名での取材を打診したが、「Aさん、Bさんだと記事の信ぴょう性に関わる」と実名を希望した。

   IGポートに27日、公取からの指導内容や、報酬の一部未払い・当該プロデューサーの言動について事実関係を問うと、「当社子会社である株式会社シグナル・エムディが、公正取引委員会より、令和3年1月19日付書面にて、文書による指導を受けたことは事実です。事実関係を確認の上、関係者への適切な対応を行うと共に、同社を含めたグループ全社において、改めてコンプライアンスを徹底し、法令等を遵守した健全な経営に努めて参ります」と答えるにとどめた。

(J-CASTニュース編集部 谷本陵)

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