2024年 5月 5日 (日)

外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(33)バルセロナで豆腐店経営の元朝日記者が語るスペイン第2波の現場 

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感染しない、させない

午後8時、どの街でも医療従事者への拍手が始まる(2020年5月撮影、(C)清水建宇)
午後8時、どの街でも医療従事者への拍手が始まる(2020年5月撮影、(C)清水建宇)

   前にも触れたように、スペイン人とバル文化は、切っても切れない。外出禁止令と共に、バルやレストランが閉鎖された衝撃を、普通の日本人が想像するのは難しいかもしれない、と清水さんがいう。

   もちろん、食事は自宅でつくるしかない。材料は買ってくるしかない。

   バルセロナにはショッピングセンターはほとんどなく、ワンフロアの小さなスーパーがあちこちにあるだけだ。どの店も客の数を制限したので、入りきれない客が路上で行列をなした。しかも2メートル間隔で並ぶので、長い行列になる。やっとの思いで店内に入ると、係員から両手に消毒液をかけられ、使い捨てのポリ手袋を渡される。商品を手で直接触らせないためだ、このルールはどのスーパーでも厳格に守られた。手袋が底を突いた店は代わりにポリ袋を配り、客はみんなポリ袋を手にはめて買い物をした。

   清水さんの店も入店は2人までに制限し、入り口に消毒スプレーと使い捨ての手袋を置いた。店では味噌や醤油、うどんや蕎麦、ラーメンなどの日本食材を置いている。行列ができてもよさそうなものだが、外出禁止令が出て、客は3分の1に激減した。

   「食品の買い物は自宅から500メートル以内で」という規則があったためだ。店から見ると半径500メートル以内の人しか来てもらえない。

   ある日清水さんは、常連客から「豆腐を買いたいが、自宅から遠いので行けない」という電話を受けた。「500メートル以内かどうか、だれにも分からないでしょう」と返すと、「検問の警察官は外出理由書の住所を見て、500メートル以上離れているから、戻りなさいと言うんです」との返事だった。

   規則は単なるお題目ではないと痛感したという。警察官の感染者も当時、2000人にのぼった。取り締まりる方も、危険を覚悟の上で検問しているのだった。

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