台湾産パイナップルに「産地偽装」騒ぎが起きている。台湾大手紙の「自由時報」が、日本の通販サイトで台湾産として売られているパイナップルについて、その段ボールのロゴを理由に「中国・アモイの業者が販売しているパイナップルだと分かった」と指摘したためだ。記事では店舗名は登場しないが、写真などから容易に特定可能だ。そのため、店舗側は検疫証明書をつけて反論。自由時報は指摘を受け、事実上の訂正記事を配信した。騒ぎは日本の有名まとめサイト「保守速報」でも拡散されていたが、店舗側の反論が出たことで「お詫び」を出した。中国業者が低価格で参入し「台湾業者も値下げを余儀なくされた」中国が台湾産パイナップルの禁輸に踏み切り、日本では台湾産パイナップルを買おうという動きが広がっている。問題になったのは「自由時報」が2021年4月3日早朝に「一部の中国の青果業者は、日本の通販サイトで中国産パイナップルを『台湾産』と装って低価格で市場を奪い、本物の台湾産パイナップルが低価格競争を強いられている」などとして配信した記事だ。記事では、通販サイトで「台湾パイナップル」と検索すると、「台湾応援」を掲げたページにたどりつき、そこでは「日本の家庭が台湾パイナップルを買うということは、台湾を支援することになる」などとうたっていたと説明。その上で、サイト上の商品写真を根拠に、中国産のパイナップルが売られている可能性を指摘した。「段ボール箱のロゴを見ると、これは中国・アモイの『鑫金鷺』が販売しているパイナップルだと分かった」「台湾のパイナップル輸出業者からは、3月に『鑫金鷺』が日本の通販サイトに超低価格で参入し、台湾業者も値下げを余儀なくされたとして不満の声があがっていた」さらに、「農委会、日本側に調査を依頼」の見出しで、日本の農水省にあたる行政院農業委員会が「同様の話を聞いたことはあるが、最近の段ボール不足が原因である可能性も否定できない」「海外で販売されている中国産の偽装パイナップルへの対応は検討中」などとコメントしたことも紹介している。記事では、背景として「台湾の輸出業者は、中国向けのパイナップルに使っていた段ボールを(他国向けにも)使っている」とも指摘。「最近の段ボール不足」の結果として、中国向けの段ボールが日本向けにも使われていた可能性を伝えている。「段ボール箱が中国向け→中国産」と誤認?記事に店舗名は登場しないが、記事の描写や写真から、それがユアーショップ(大阪市)の楽天市場店だということは容易に特定できる。日本でもツイッターで拡散され、まとめサイトにも掲載された。店舗側の反応は素早かった。4月3日夜には、台湾当局が発行した「輸出植物検疫証明書」の画像をウェブサイトやツイッターで公開。証明書では「生産地PlaceofOrigin:TW(TAIWAN)」と読み取れる。店舗側の書き込みによると、商品写真には「※写真内の外箱はイメージです。出荷時期により段ボールのデザインは異なります」というただし書きがあったものの、それでも誤解が起きて自由時報の記事が出るきっかけになったようだ。「台湾農家様から頂いた、外箱の宣材写真が中国向けに販売予定をしていた外箱写真を弊社が掲載していたので何故か誤解を招いたみたいです」保守速報「今後、この様な記事は一切扱いません」自由時報が4月5日に出した続報では、店舗側の説明とともに、台湾当局に追加取材した結果を「最近、農家では段ボール箱の供給が逼迫(ひっぱく)していることが分かった。そのため、過去に中国向けの輸出に使っていた段ボールを使って包装した。これが誤解を生んでいたが、近く業界で話し合いが行われることになった」などと報じている。ただ、初報に対する明示的な訂正は見当たらず、初報もウェブサイトに掲載されたままだ。今回の「産地偽装」騒動は日本語でも拡散され、その大きな発信源のひとつが、まとめサイトの「保守速報」。同サイトは、店舗側が反論を出したことを受け、「検疫証明書」の写真とともに、管理人名で謝罪コメントを出した。「ユアーショップ様、大変申し訳ありませんでした。そしてサイトを見て頂いている全てのユーザー様に謝罪します。このようなことが再び起こらぬよう今後、この様な記事は一切扱いません。ご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありませんでした」「高須クリニック」の高須克弥院長は、この謝罪文をツイートして拡散。パイナップルの絵文字とともに「いまユアーショップさんからの台湾産パイナップル購入の手配を指示しました」と書き込んでいる。(J-CASRニュース編集部 工藤博司)
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