2024年 4月 19日 (金)

「障害者と結婚して大丈夫なの?」 聞こえてくる「心配の声」に当事者が感じる歯がゆさ

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   20歳の時に事故で右腕と両足を失った山田千紘さん(30)は、運営するYouTubeチャンネルの企画で結婚式場を訪れたことで、改めて結婚について考えたという。結婚願望をかねて抱いてきた一方、事故後に交際した異性との関係で「悩んだ」こともあった。障害の当事者が感じた複雑な思いとは何なのか。山田さんが語った。

   【連載】山田千紘の「プラスを数える」~手足3本失った僕が気づいたこと~ (この連載では、身体障害の当事者である山田千紘さんが社会や日常の中で気づいたことなどを、自身の視点から述べています。)

  • 結婚式場を訪れ、タキシードを試着した山田千紘さん
    結婚式場を訪れ、タキシードを試着した山田千紘さん
  • 結婚式場を訪れ、タキシードを試着した山田千紘さん
    結婚式場を訪れ、タキシードを試着した山田千紘さん
  • 結婚式場を訪れ、タキシードを試着した山田千紘さん
  • 結婚式場を訪れ、タキシードを試着した山田千紘さん

友人たちから「大丈夫なの?」と心配される

   YouTubeの編集をしてもらっているタクという友人に「結婚したら結婚式を挙げたいな」と話していたら、タクのお父さんが結婚式場を経営していると聞きました。話をしたら、式場を見せていただけることになりました。

   式場では「ショートパンツのタキシード」をたまたま試作していました。ハワイでの挙式プラン用だそうです。試着させてもらったらサイズが僕にピッタリ。そのまま撮影させてもらい、YouTubeに動画を投稿しました。

   ショートパンツは義足を見せられます。もし自分が結婚して結婚式を挙げるなら、手足がないことをあえて隠すことはしたくなくて、ありのままでいたい。いつも通り義足をつけて堂々と歩きたいです。「これが今の自分だ」と自信を持って見せることで、相手の親御さんも安心してもらえるのではないかな。

   昔から結婚願望はあります。温かい家庭を築いて、家族のために頑張りたいし、自分の両親にも家族と会ってもらいたい。そんな将来を思い描いています。

   知り合いから聞いた話ですが、身体障害がある人と結婚するとなって、周りの友人たちから「障害者と結婚して大丈夫なの?」と心配されたそうです。その友人たちはきっと、結婚相手がどんな人か知らないだろうし、何が「大丈夫」で何が「大丈夫ではない」かも分からない。だけど、漠然と不安がよぎっているのだと思います。結婚を考える相手が障害者だった時、本人よりも「周りが心配する」という話は他にも聞いたことがあります。

心配の背景にある「比較」

   僕も事故後、お付き合いしていた女性がいましたが、悩んだことがありました。その人が友達に会った時、僕と付き合っていることを言ったら「大丈夫なの?」と返されたと聞いたこともありました。その話に、僕は当時何でもないような態度を取ったけど、正直なところ心の中では複雑でした。

   結局3年くらいでお別れしてしまったけど、最後まで友達にもご両親にも直接会わせてもらったことはなくて、「僕の障害が理由なのかな...」とも思いました。もちろん、それ以外の点で僕自身に原因があったのかもしれないけど、少しずつ距離を感じてしまっていたんです。

   障害と言っても多様なので、あくまで僕の障害の場合で考えますが、なぜ心配されるかというと「比較」されるからだと思います。健常者には両手両足があって、僕は両足と右腕がない。すると「できない」ことに目が行きがちです。「身の回りの世話をしながら一緒に暮らせるのだろうか」。そう心配して、周囲の友人たちは「大丈夫なの?」と言ってくれているのだと思います。

   見た目で判断しがちなんですね。心配する方が先行してしまうようです。比べるのは仕方がないこと。でも、障害という自分の努力だけではどうにも変えられないことで比べられると、歯がゆくなります。人によっては自信をなくしてしまうこともあるでしょう。

手足がないのは「個性」

   僕も事故直後はできないことが多くて、全く歩くこともできなかったから、介護されている状態でした。今は1人暮らしをして、仕事もしていて、YouTubeで日常生活も公開しています。もし交際相手が僕の障害を理由に心配になったら、YouTubeを見てもらえれば安心してくれるかなと思えます。

   それでも「周りの目」は必ずあると思います。やはり相手のご両親に挨拶しに行くとなったら、僕自身もご両親の気持ちが気になります。手塩にかけて育てた我が子が結婚相手に選んだ相手が障害者だったら、どう思うのかなと。いくら僕自身が「大丈夫です」と言っても、理解されるには時間がかかるかもしれない。そんな葛藤もあります。

   だからこそ、僕は自分の行動で、そうした心配が先行してしまう現状を変えていく必要があると思っています。もし結婚を考える人が僕にいたとして、その人は僕を誰かと比較するのではなく1人の人間として見てくれたら良いなと思うし、周囲の人たちが心配しているなら、僕は自分が「できる」ことも知ってもらいたいです。

   だから積極的に会ったり、正直に話したりしたい。自分は何が「できない」と思われているのか、それは本当に「できない」ことなのか、逆に「できる」ことは何か。そういったことを見てもらいたいです。

   「障害者」とか「健常者」ではなく、僕は手足がないのは「個性」だと思っています。比べるものではないです。障害があることで「できない」ことがあったとしても、それだけに目を向けるのではなく、「できる」ことを知ってもらうと、「できない」ことも含めて全部僕の個性だと受け止めてくれるのではないかと信じています。

   マイナスなことを言い出したら、誰だってキリがないです。完璧な人はいません。いろんなところに魅力があるんだと思ってもらえれば嬉しいです。

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