2024年 4月 24日 (水)

近視、老眼、色覚多様性を体験できるVR空間にネット驚き 「人が見てる世界はこんなにも違うのか」

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   「近視、老眼、乱視、色覚特性、&メガネのありがたみをVR空間で体験出来る」−−。

   多様な視覚の状態をシミュレーションできるというVR(仮想現実)作品が、ツイッターで「再現度が高くて素晴らしい」「他の人の当たり前が実感できる」などと驚きや感心を集めている。制作者に話を聞いた。

  • VoxelKeiさんが手掛けた「NearSighted Classroom」(VRChat公式サイトより)
    VoxelKeiさんが手掛けた「NearSighted Classroom」(VRChat公式サイトより)
  • VoxelKeiさんが手掛けた「NearSighted Classroom」(VRChat公式サイトより)

「自分とは違う他人が世界をどう見ているのか」

   話題のきっかけとなったのは、VRクリエイター・VoxelKei(@VoxelKei)さんによる2022年9月17日のツイートだ。冒頭の文のように説明し、ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」で公開している自作の空間「NearSighted Classroom」を動画で紹介した。

   学校の教室を模した空間が一人称視点で映し出され、前の黒板には近視、老眼、乱視の状態を各3段階で切り替えるボタンが配置されている。

   設定後は視界がぼやけて黒板の字を読めなくなったり、近くの物にピントが合わなくなったりといった様子だ。メガネをかけると視界が良好になる体験のほか、黒板に貼られた視力検査表でも変化を確認できる。

   後ろの黒板には、色の見え方が異なる「視覚多様性(特性)」を再現するためのコントロールバーが設けられている。「1型2色覚/3色覚」「2型2色覚/3色覚」「3型2色覚/3色覚」の区分で色を調整する。例えば2型2色覚の人には緑色を感じる細胞がなく、赤と緑を見分けにくい。ツイートによると、空間内では、視覚の状態を維持したままYouTubeなどの動画が視聴可能だという。

   この空間は21年4月に公開されたものだが、今回はNPO法人バーチャルライツが主催する「VR空間大賞」への応募に際して、改めてツイートされることとなった。投稿では次のようにコメントしている。

「アワードのテーマが『イマジネーション』ということで、自分とは違う他人が世界をどう見ているのかを『イマジン』するきっかけになれば幸いです...」

   投稿は3100件以上のリツイートや7000件超の「いいね」を集め、「凄い!まさに私がメガネ外した時と同じ感じ」「再現度が高くて素晴らしい。まさにこんな感じなんよ」と驚く声が広がっている。

   ほかに「自分に見えてる世界と人が見てる世界はこんなにも違うのか」「他の人の当たり前が実感できる...なんていい作品なんだ...」「これは体感したらお互いにわかりあえそうだ」と感心する声があがっている。

「自分の見え方を再現するような作り方」

   制作者のVoxelKeiさんは21日、J-CASTニュースの取材に対し、自身は強度の近視と乱視、最近では老眼も進んでいる身だと明かした。

   その3点については先の空間を制作するにあたり、「自分の見え方を再現するような作り方になっています」。空間内の近視と老眼の視力設定はヘッドマウントディスプレイの性能などによるため明記していないが、実寸だという視力検査表を参照するよう伝える。

   一方、色覚特性は制作物の精度を確認するのに苦労した。ツイッター上で色覚特性を持つユーザーに意見を聞きながら制作を進めたという。当事者から見て、色覚特性の項目を調整しても色の変化が起きないようにした。

   VoxelKeiさんいわく、こだわったのは肉眼の模擬。陰影を処理する「シェーダー」の技術を使って視覚効果を自作した。そもそも、VR空間における視覚表現の技術を探究するなかで得られた発見が制作のきっかけとなったともいう。

   発見に加えて、自分より視力の良い相手に口頭で感覚を共有する難しさを感じたという幼少期の記憶が組み合わさり完成にいたる。「『誰もがその場所にいた記憶がある』状況でこの体験をしてみて欲しいと思った」ため、教室を舞台に設定したという。

反響に喜び「それを目指して作りました」

   投稿に寄せられた反響のなかでも、知見を得られたという声に対して「大変嬉しいです。それを目指して作りましたので」とVoxelKeiさんは喜ぶ。

「私がこれを作った目的が果たせているようなご感想が総じて多いので嬉しく思うと共に、今後より具体的に役立てるようにしていきたいと思っています」

   今後の展望に関しては、次のように意気込んだ。

「いろいろ取り組んでいますので一言で言えませんが、『VR空間の技術を使って現実世界で役立つ何か』『現実空間には存在しない、VR空間から生まれた表現や楽しみ』の両輪で活動して行きたいと思っています。

今回の作品は一つ目の項目にあたり、二つ目のものについてはVR空間でToneVokという音楽ユニットを組んで活動もしています」
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