2024年 5月 3日 (金)

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
日銀「事実上の利上げ」は、黒田総裁の独断と考えにくい

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   日本銀行は2022年12月20日、容認する長期金利の上限と下限を0.25%から0.5%程度まで拡大した。会見で、黒田東彦総裁は、事実上の利上げだとの指摘に対し、利上げではないと強調した。また、金融緩和は維持しているとし、景気にプラスとした。

   市場の反応は、長期金利が0.2%程度上昇し、為替は5円程度円高になり、株価は800円程度下落した。黒田総裁は利上げでないと言ったが、市場の反応は長期金利の急騰だった。黒田総裁は9月26日の会見で、長期金利の上限引き上げは利上げに当たるのかとの質問に「それはなると思う。明らかに金融緩和の効果を阻害するので考えていない」と明言していたので、そのとおりだった。

  • 日本銀行の黒田東彦総裁(写真:つのだよしお/アフロ)
    日本銀行の黒田東彦総裁(写真:つのだよしお/アフロ)
  • 日本銀行の黒田東彦総裁(写真:つのだよしお/アフロ)

マクロ経済よりも金融機関を優遇した政策

   その結果、急な円高になったが、黒田総裁は急な為替変動は好ましくないといっていたが、今回の円高は急な為替変動だ。

   また、以前の本コラムで書いたように、円安は日本経済全体のGDP押し上げ要因だったが、円高になったので、株価が急落したのは当然だ。

   円安で企業の経常利益は過去最高となっており、円高が景気悪化につながるだろう。生産拠点の国内回帰の動きにも冷や水を浴びせかねない。

   今後、住宅ローンの金利も上昇し、企業が融資を受ける条件も厳しくなるだろう。一方で、銀行など金融機関の経営には恩恵が大きい。今回の事実上の利上げは、雇用、GDPなどマクロ経済よりも金融機関を優遇した政策だといえる。

   いずれにしても、市場から見れば、従来の発言を翻した「黒田の乱」だ。しかし、これだけの政策方向の転換について、黒田総裁だけの独断とも考えにくい。岸田文雄首相の了解があったと考えるのが自然だ。

無理筋の防衛増税を押し込んだ岸田首相

   岸田政権は、防衛費増に対して、防衛増税を打ち出した。あまりに唐突であったので防衛増税については自民党内でも反対が多い。しかし、自民党税調の税制改正大綱には書き込んだ。

   結局、岸田政権は、財務省の言いなりで無理筋の防衛増税を押し込んだ。前回の本コラムをみれば、増税なしで防衛費を捻出することも出来るのに、増税をあえて選んだ。マクロ経済からみれば、増税も利上げも経済に悪影響で、このタイミングでやることではない。おそらく、黒田日銀総裁も、増税をする岸田政権を陽動作戦で側方支援しているのではないかとさえ思えてくる。

   黒田日銀総裁は元財務官僚で税畑であるので、基本的に増税指向だ。利上げは金融機関には恵みの雨であり、財務官僚も日銀官僚も多く天下っているので、身内の評判は悪くないことも背景かもしれない。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「マスコミと官僚の小ウソが日本を滅ぼす」(産経新聞出版)など。


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