2024年 4月 29日 (月)

「単行本一冊に2000円」は高すぎるのか 「値段聞いて諦めた(泣)」投稿で論争勃発...作家ら続々反応

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   単行本に2000円は高すぎるのか、それとも――。いま、SNSでこんな論争が巻き起こっている。

   発端となったのは、SNSで小説を紹介するインフルエンサーの投稿だ。

  • 本一冊に2000円出せる?(画像はイメージ)
    本一冊に2000円出せる?(画像はイメージ)
  • 本一冊に2000円出せる?(画像はイメージ)

「お金の問題で読みたい本を諦めた」

   単行本の価格をめぐる問題提起をしたのは、「小説紹介クリエイター」として活動するインフルエンサーのけんごさんだ。TikTokやYouTube、InstagramといったSNSでおすすめの小説を紹介する動画を投稿し、若年層を中心に人気を博している。

   けんごさんは2023年9月26日、X(旧ツイッター)に「『お金の問題で読みたい本を諦めた』紹介動画にきてたコメントです。それも、頻繁にくるコメントのひとつです」として自身の動画に寄せられた視聴者からの反応を紹介した。

   添付されたスクリーンショットには、

「めちゃくちゃ読みたい!! でもこの本2000円もするって聞いて諦めちゃった.........(泣き顔の絵文字) わたしに2000円分元取れる読書力があるかって言われたら絶対NOだし(泣き顔の絵文字) 読み終わったらたぶんもう読まないし一回楽しむだけに2000円はちょっとな~~~」

とする率直な意見がつづられていた。

   けんごさんはこの意見に「単行本2000円、やっぱりハードル高いよなぁ」と共感し、「簡単に解決できる問題じゃないけど、版元も作家さんも読者も、関わる人全員が幸せになる形で、本を気軽に楽しめる世の中になってほしいものです」としている。

「図書館や古本という手段が、うまくその人たちに届くといいなと思う」

   この投稿は注目を集め、一般のユーザーだけでなく出版関係者からも様々な声が寄せられた。

   ブック・コーディネーターの内沼晋太郎氏は「単行本2000円が高いと感じる人がいるのは当然だ」とし、「本を売ったりつくったりする仕事をしてきた人は、〈2000円の壁〉の大きさを、体感的に知っている。2000円を越えると、売れ行きは急に悪くなる」と自身の経験を振り返った。

   「無理矢理にでも1850円+税、のような刻み方をしてきた」と努力を重ねてきたとするも、コスト高や売れ行きの問題で、「どうしても2000円を越えなければ、ある種の本が作れなくなってしまった」という。

   「ある目線から見れば、本はとてつもなく安い。2000円で人生が変わり得るのだから。あるいは、こんなに制作原価率が高いのだから。著者が人生を賭けているのだから」と本の値段とその価値について述べ、「けれど高いと感じる人がいるのは当たり前だ。若ければなおさらだ。お金が足りない、けれど読みたい。図書館や古本という手段が、うまくその人たちに届くといいなと思う」とした。

「本や書店は一律に語られすぎ」

   青山ブックセンター本店・店長の山下優氏は、「単行本2千円が高いかどうかは元も子もないけど、その本によるから一括りにして高いというのは意味ないというかマイナス」とし、「今までそういう風にしてきたから、紙の値上がり以外などで値段を上げることができず、価値を高めることができてこなかったから、書き手が困ったり書店が無くなり続けてるいるのでは」(原文ママ)と主張。

   続くツイートで「本や書店は一律に語られすぎ」としている。

   出版レーベル「PAPER PAPER」を運営する西川タイジ氏は、「酒は、秒で2000円超えるけど...。本はバチっとハマるやつに会えたら一生楽しめるから...。なんなら、末代まで残るから...」とした。

   作曲家・ミュージシャンのヲノサトル氏は「自分の学生時代は本やレコードを買うために食事を抜いたりしたけど、息子氏の世代に『本を買うために食事を抜け』と言うことはできないわな」とした。

「この数年で、読書は相対的に『高い』娯楽になった」

   本の価格をめぐっては、書き手である作家からも多くの反応が寄せられた。

   児童文学作家の村山早紀氏は「二千円が高いと思えるかどうかは、その人と本の付き合い方にあるのかなーと。本一冊の価値は多分、人によって違う」とした。

   「引用されてる方の場合、一度読んで楽しい時間が過ごせればいいようなので、そういう楽しみ方には二千円はたしかに高いかも」としつつ、「一方で、買った本を何度も読み返したり、頁を開いて紙の冷たさや匂いを堪能したり、好きな文章を手で書き写したりするタイプの人には、二千円の本は高くないだろうと思う」と読者のタイプによって本との向き合い方も違うのではないかとしている。

   小説家の鈴木輝一郎氏は「我々書く側は、襟を正して聞く話、ですね。この数年で、読書は相対的に『高い』娯楽になった。その自覚、大切です」と作家としての心構えをつづった。

   ライトノベル作家のぼっち猫氏は「単行本2000円超えの話、まあそうだろうなぁと正直......。私もよほど好きor気になる本じゃないと、1500円超えは躊躇ってしまう」と言及した。

   多くの反響が寄せられたことに対し、けんごさんは27日夜「昨日のツイートで議論の引き金を引いてしまい『やっちまった...』と思う反面、本のことを真剣に考える人がこんなにもいて嬉しいなぁとも思う。とはいえ、お騒がせしました...」とつづっていた。

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