これからの時代、「稼げる社員」しか、会社で生き残ることはできない。人事制度改革・人事コンサルティングで手腕を発揮する、高城幸司さんが、仕事に「ひねり」を加え、上司の指示を超えた行動をするための仕事術を伝授する。今回のポイントとして、高城さんは、とくに若手社員に向けて「仕事におけるブラッシュアップが大事だ」という――。売り上げが伸びないのは、ブラッシュアップができていないから?先日、地方の食・工芸・雑貨などの魅力を紹介するプレゼン大会で、友人が関わっていたお菓子が審査員特別賞を受賞。その成果についての話を聞く機会がありました。すると、ポイントはブラッシュアップを重ねる機会を得たことで、品質が大幅に向上することができたと、そう話してくれました。あらためて、日本の地方にはいいものがありながら、売り上げが伸びない。結果として消えてしまうケースが大半。どうしてなのか? 理由はブラッシュアップができていないから。ブラッシュアップを重ねれば、いいものは売れるものに変わる、と力説してくれました。ちなみにブラッシュアップとは、みがきをかけること、さらによくするこという意味。企画やプロジェクト、書類、学習内容の見直しなど、作り上げたものやスキルをさらに現状よりもよくすることを指して「ブラッシュアップする」と表現します。磨き直しを含めて、今以上に腕やスキルを磨き上げるときに使われます。すでに当初の予定では完成だった商品でも、そこからさらにブラッシュアップを行い、何度も試行錯誤すれば、質が高まり、高い評価や消費者のリピートにつながることがよくあります。ブレストは、ネガティブな意見も否定せず本音をでも、ブラッシュアップは売れる商品づくりだけでなく、日々の仕事における取り組みでも重要なことです。話を聞いていて、自分の仕事ぶりの反省の機会にもなりました。少しばかり、仕事におけるブラッシュアップについて考えてみたいと思います。ブラッシュアップのやり方について、ステップごとに理解していきましょう。大きくは該当テーマの選定→手法の洗い出しと工程の設定→実行といったプロセスを行うことになります。まずは該当テーマの選定ですが、たとえば会議のマニュアルとか採用選考プロセスなど、・効率化できそう・伸びしろがありそう・何か物足りないと感じるものを対象に選定。ブレインストーミング=ブレストなどの手法で意見交換を活用して、対象素材に何か欠けている、補完したい部分がありそう、といった分析を行い、ブラッシュアップで得られる機会効果の高い対象をみつけましょう。ちなみにブレストでは、ネガティブな意見も否定せず、本音を引き出せるように心がけましょう。価値あるアイデアへと進化させるには続いて、手法の洗い出しと工程の設定となります。取り組みとしては、さまざまなものが考えられますが、ブレストで出た中でいくつか役立ちそうなアイデアを厳選する。あるいは、いくつかのアイデアと組み合わせて、価値あるアイデアへと進化させる工夫を凝らしてみましょう。たとえば、ブレストで出たアイデアを、似ているもの同士でジャンルごとに分けておくこと便利。それによって、結びつけるべきアイデアを厳選する作業を、効率よく進めることができます。続いて、実行となります。改善や補完を実施して、対象素材の質を現状以上に高めていくのです。検討の段階では想定外の問題などが発生しても、対象素材の質を高めることに主眼を置いて冷静に対応していきましょう。これにより、ブラッシュアップが着実に実施されていきます。注意すべき点が1つただ、ブラッシュアップのプロセスには、注意すべき点が1つあります。それは、該当テーマでこれまで取り組んできたことを否定することになる可能性があることを認識しておくということです。ブレストで意見だしのときにはネガティブにならないようにと書きましたが、具体的な実行に向けて手法を整理していくと、過去否定をせざる得ないことがあるからです。たとえば、先輩が考えた会議マニュアルについて、進行上の問題をみつけて改定案を出すにあたり、先輩も会議に同席していたりすることがあったりするかもしれません。あるいは、同席はしていなかったとしても大幅な改定となれば、前任に対する批判にもつながるかな...と抵抗感を感じるかもしれません。ただ、ブラッシュアップすると決めれば、覚悟しなければならないことです。批判でも否定でもなく、未来志向でよりよくするために必要なことであると心に決めて取り組んでいきましょう。【筆者プロフィール】高城幸司(たかぎ・こうじ):株式会社セレブレイン代表取締役社長。1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
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