2024年 5月 21日 (火)

誤解受けやすい「トゥレット症」、街で当事者見かけたら? 向き合い方を考える

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   自分の意思に反して声が出たり身体が動いたりする「チック」の症状が現れる「トゥレット症」――。2024年3月、意思に反して攻撃的な言葉や公共の場でためらわれたりする言葉(卑猥な言葉など)を発してしまうこともあるチックの症状の一つ「汚言症」の動画が話題となった。SNSでは、症状に対しさまざまな誤解も生じた。

   2回シリーズの後半では、当事者が日常でどのような困難を抱えているのかに焦点を当て、当事者以外を含め、どのように向き合えばよいかを考える。

  • チック症のタカハシさんのインスタグラム(@takahashi_tikku)より
    チック症のタカハシさんのインスタグラム(@takahashi_tikku)より
  • チック症のタカハシさんのインスタグラム(@takahashi_tikku)より
    チック症のタカハシさんのインスタグラム(@takahashi_tikku)より
  • YouTubeチャンネル「チック症のタカハシ」2024年1月17日公開の動画より
    YouTubeチャンネル「チック症のタカハシ」2024年1月17日公開の動画より
  • YouTubeチャンネル「チック症のタカハシ」2024年1月17日公開の動画より
    YouTubeチャンネル「チック症のタカハシ」2024年1月17日公開の動画より
  • 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」より、編集部加工
    国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」より、編集部加工
  • チック症のタカハシさんのインスタグラム(@takahashi_tikku)より
  • チック症のタカハシさんのインスタグラム(@takahashi_tikku)より
  • YouTubeチャンネル「チック症のタカハシ」2024年1月17日公開の動画より
  • YouTubeチャンネル「チック症のタカハシ」2024年1月17日公開の動画より
  • 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」より、編集部加工

チックを「一時的にコントロールや抑制ができたとしても、ほんの短い時間」

   チックとは、「素早く、反復するような動きや発声で、自分の意思で抑制が困難な症状」で、声が出る「音声チック」と動作に表れる「運動チック」に分けられる。咳払いや舌打ち、肩をすくめるといった単純なチックと、単語を発したり一見意味のある動作のように見えてしまう「複雑音声チック」「複雑運動チック」がある。チックは幼児期や小学校低学年頃によくみられ、自然に消失することが多い。しかし、チックは持続したり、再び現れたりして、多彩な音声チックや運転チックが1年以上認められると、「トゥレット症」と言われる。奈良県立医科大学の岡田俊・精神医学講座教授によると、トゥレット症は、体質の要素が強く、心理的な原因で起こるわけではないという。

   岡田さんはトゥレット症の症状は周囲から「誤解されやすい」と説明する。

   まず、チックは「抑制が困難」な症状だ。しかし、その症状は、その状況によって変動しやすい。岡田さんは「チックの症状が強くない時間もあったり、ほんの短時間は抑制できたりすることもあることから、常に出さないように我慢すればいい、症状が出るのは努力しようという気持ちがないからじゃないか」といった誤解を受けやすいとしたうえで、

「一時的にコントロールや抑制ができたとしても、ほんの短い時間です。その状況の緊張の度合いによって、症状も変動したりしますが、これは意図的に抑制したり、わざとチックを出しているわけではありません」

と説明する。

   汚言症は「言ってはいけない」と思っていることが出てしまう。

   汚言症についても誤解が起きやすい。

「例えば、子どもに汚言があると周囲から『こんな小さい子どもが卑猥な言葉を言って、この子はどんな大人になるのか』と心配されたり、あるいは、おばあちゃんに対して『死ね』ったりするので、親が動転することがあります。しかし、卑猥なことなどいうのはとんでもないと思っている子どもに限って卑猥な言葉が出る。大好きなおばあちゃんにだからこそ、攻撃的な言葉が出るのです」

と例を挙げ、「つまり、『こんなこと言っちゃいけない』と思うようなこと、『こんなことを言うなんて世の中では許されない』と思っているようなことが、逆に言葉になって出るのです。抑制の障害なのです」と説明した。

   トゥレット症の治療は、本人にとっても周囲にとっても「症状を知り、うまく付き合う病気」だといい、「医師から症状を医学的に説明し、症状の性質やその後の経過、そして日常生活の工夫や、可能な治療について説明をし、一緒に付き合い方を考えるというのが大切なことです」と説明した。

   日常生活に支障がある場合は薬物療法をすることもあるが、それによって「そのときの症状は軽減することが多いが、その後のチック症の経過を変えるわけではない」という。薬には眠気などの副作用もあることから、「効果と副作用のバランスを考えて、治療した方がその方の生活の質を改善するのであれば治療することになります」という。「幼少期のチックに対して、将来トゥレット症にならないように治療するということはありません」と説明する。

   また、症状を抑える方法としては、「ハビットリバーサル」という行動療法(心理療法の一種)があるという。

「例えば、喉が詰まってきた感じがしたあとに『うっ』と声が出たりとか、腕がむずむずする感じがして腕を振ってしまうといったように、症状が出る前に独特の前触れの感覚があることがあります。喉が詰まってきたら、ゆっくりと自律的に息をしたり、腕のむずむず感があれば腕を抑えるという風に、チックと同時に行えないような逆の行動をあえてすることによって、チックが出そうな衝動をはやり過ごすという方法があります」

   しかし、「このような前触れがあるとは限りませんし、症状も多彩ですから、すべての症状に対して行えるものではありません。また、当事者の方が、こうした対処行動を自然に習得していることもあります」という。

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