甲子園で高校野球の熱戦が繰り広げられている中、異色の学校が話題となっている。18年に開校し、創部8年目で甲子園に初出場する未来富山(富山代表)だ。
全校生徒24人中23人がアスリートコースで学ぶ野球部員
愛媛県松山市に本校を置く未来高校の分校で、全校生徒24人のうち、23人がアスリートコースで学ぶ野球部員となっている。生徒たちは午前中にプリント学習で勉強し、午後は野球の練習という日々を送る。
富山県出身は1人のみで、残りの22人は関東を中心とした県外出身者だ。野球に打ち込める環境に魅力を感じ、部員全員が魚津市の寮で共同生活を送っている。
指導に当たる角鴻太郎監督は、元ヤクルトの角富士夫さんの長男で、日大三高に在学していた時に甲子園に出場した経験を持つ。
今夏の富山県大会では6試合で計63得点を挙げるなどノーシードから勝ち上がり、決勝の高岡商戦も13-7と快勝。プロ注目のエース左腕でU18日本代表候補に選出された江藤蓮(3年)を中心に、個々の能力は高い。
高校野球を取材するライターは「打撃に力を入れており、スイングスピードが速い。エースの江藤が甲子園の大舞台で本来の力を発揮できれば、勝ち上がる可能性が十分にある」と分析する。
ただ、特殊な学校のシステムに疑問の声も。「野球の専門学校。しっかり授業を受けている学校の野球部と比べて不公平に感じる」、「野球部はあくまで部活動です。野球に特化したこういう学校は高校の本質から外れている」などSNS上では批判的な指摘が少なくない。
過去の部員同士のトラブルが大会前に発覚、野球部長が謹慎処分
日本高野連が未来富山に不祥事があったことを大会前の8月1日に発表したことで、逆風も強まる。報道によると、4月下旬に被害部員が寮の上履きで外を歩いていたのを管理者が見つけ、1年生全体に注意したところ、部員同士でトラブルになり、部員1人が被害者の部員を一度蹴ったという。
野球部長は事案を把握していたが、被害部員と加害部員が和解して解決したと認識し、富山県高野連に報告をしていなかった。日本高野連に匿名による報告があり、同校に調査、報告を求めたところ不祥事が発覚。その後に審議委員会で審議され、加害部員に対する注意の措置が決まり、日本学生野球協会審査室が野球部長に3か月の謹慎を決めた。
選手たちは「富山に恩返ししたい」と抱負を口にしている。目標は富山県勢初のベスト4。新興勢力が旋風を起こせるか。
(中町顕吾)