セールスをけん制?玄関で5分3000円「応対料金」求める張り紙が話題 法的に有効?弁護士の見解は

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   「基本料金 5分毎3000円」──。

   セールスなどの訪問をけん制するかのように、玄関のインターホンが押された場合に「応対料金」を求めると予告する張り紙は、実際のところ法的に有効なのか。こんな疑問がXで話題になっている。弁護士の見解を聞いた。

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  • 写真提供:Xユーザー「ナッツしか勝たん(@nattsusikakatan)」さん、話題になった投稿より
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「呼び鈴を押した場合、上記に同意とします」

   話題になっているのは、Xユーザー「ナッツしか勝たん(@nattsusikakatan)」さんが2025年9月17日に「こういうのって法的に有効なの?」と投稿した写真だ。インターホンの上に「玄関応対料金」と題した張り紙があり、

「当家は訪問セールス、業者の挨拶、その他宗教の勧誘、それに類する対応は費用を頂いております」「基本料金 5分毎3000円」

と記されている。続けて「呼び鈴を押した場合、上記に同意とします。不払いの際はイタズラと判断し通報します」「お支払いは現金のみです。※おつりはでません」「対応中は録画させて頂きます。予めご了承ください」といった文言が並んでいる。この紙だけでなく、インターホン本体に「チャイム押さないで」と注意書きがされている様子だ。

   投稿はXで4万3000件超の「いいね」を集め、「法的には有効ではないと思う」「grok(編注:生成AI)に聞いたら法的に有効になる可能性が高いそうな」「法的にはどーかしらんがめちゃくちゃ抑止効果ありそう笑」などと、さまざまな反応が出ている。

   果たして実際に支払う義務は生じるのか、J-CASTニュースは19日、弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士に話を聞いた。正木氏は下記の結論を示している。

「このような『玄関応対料金』の張り紙が一方的に掲げられていたとしても、基本的には法的に支払い義務が発生するとは考えにくいです」

「仮に請求したとしても法的根拠を欠く主張となる」

   正木氏によると、契約の成立には双方の合意──つまり「申込み」と「承諾」が必要だという。

   しかし、「張り紙を見ただけでチャイムを押した訪問者が、実際にその条件に同意して申込みをしたと評価できる場面は極めて限定的です。とくに、セールスや宗教勧誘などの訪問者は、多くが一方的に事務的・定型的な動きをしており、料金の掲示内容を読んで理解し、納得の上でチャイムを押したとは言い難い」としている。

   加えて「5分ごと3000円」という金額設定に関して、「社会通念上、常識的とは言えず、仮に契約成立の余地があったとしても、民法の『公序良俗違反』(民法90条)や『消費者契約法第10条』により無効と判断される可能性が高い」という。

   正木氏は「また、仮に支払いを拒んだ訪問者に対して『不払いはイタズラと判断し通報する』とした場合、通報が虚偽や過剰であれば、逆に『虚偽告訴罪』(刑法172条)や『名誉毀損罪』(刑法230条1項)などのリスクも否定できません」とも述べ、

「つまり、張り紙の掲示だけでは法的拘束力はほぼなく、仮に請求したとしても法的根拠を欠く主張となるでしょう」

と改めて指摘した。

「設置した側が逆に法的責任を問われることもあるので注意」

   先の張り紙に対して、Xでは導入を試みる声も出ていた。ただ、場合によっては設置した側にリスクが生じる可能性もあるようだ。正木氏は、

「このような張り紙を見て訪問をやめようという心情になる方もいると考えられるため『訪問の抑止力』になる可能性は一定程度あるものの、表示内容や対応方法によっては、張り紙を設置した側が逆に法的責任を問われることもあるので注意が必要です」

と呼びかけ、下記のように詳説している。

「例えば、『録画させていただきます』といった記載も、無断で相手の顔や音声を録音・録画した場合、プライバシー侵害や不正録音としてトラブルの火種になる可能性があります(民法709条の不法行為責任など)。防犯目的での録画は一定程度認められるものの、それを他人への牽制や請求の材料に用いることは、許容範囲を逸脱するおそれがあります。

加えて、もしこの張り紙を『相手に対する脅し』や『過剰な威圧』と受け取られるような文面で掲示した場合、場合によっては『威力業務妨害罪』(刑法234条)や『脅迫罪』(刑法222条1項)の構成要件に近づくこともあり得ます。

したがって、こうした張り紙を掲示する際には、感情的な文言ではなく、あくまで『訪問はご遠慮ください』『対応できません』など、穏当かつ明確な意思表示に留めることが望ましいでしょう」
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