「重力ピエロ」や「ゴールデンスランバー」など数々のベストセラーを世にだしてきた作家の伊坂幸太郎さんがデビュー25周年を迎えた。2025年12月4日放送の「この本、読みました?」(BSテレビ東京)では伊坂さんのデビュー25周年記念スペシャルと題して、担当編集者やゆかりの人々のインタビューで伊坂さんの作家像に迫った。
朝井リョウ「その街で最も小さき者の握りしめたこぶしみたいなものを小説に」
伊坂さん自身はテレビ出演NGということで、伊坂さんからGパン姿の写真を借りて番組に登場。
MCの鈴木保奈美さんは、
「伊坂さんがデビューした2000年というのは、私の子どもがまだ小さくててんてこ舞いだった頃。読書どころではない時期だったので、申し訳ありませんが初伊坂です」と目の前の担当編集者たちに頭を下げた。
担当編集者が自身の手がけた作品を紹介しながら伊坂さんの人となりを話していく。ある恋愛リアリティーショーの共通の視聴者ということからメル友になった作家の朝井リョウさんはVTR出演した。
「恋愛リアリティーショーの感想をメールで言い合うのですが、伊坂さんはどれだけ(恋愛の成就が)無理そうでも、その空間の中で一番弱き者の味方をするんです。伊坂さんの小説もそうだなと思うことがあって、その街で最も小さき者の握りしめたこぶしみたいなものを小説に書いている。伊坂さんは『伏線の回収』が代名詞のようになっているけどむしろそっちの方が伊坂文学の魅力かもしれない」
と話した。
ミステリー作家と言われないのを寂しいと思っている
また「アイネクライネナハトムジーク」の映画化で音楽を担当したミュージシャンの斉藤和義さんは、ある時、伊坂さんに詞を書いてもらうことを依頼したという。斉藤さんは「伊坂さん本人はOKだったが、奥さんから『あなたは小説書きで歌の詞を書く人じゃないでしょ』と言われ、詞を書いてもらうことはかなわなかった」というエピソードを披露した。
最新刊を担当した編集者は「伊坂さん本人は毎回ミステリー小説を書いているつもりなのに、周囲からミステリー作家と言われないことを寂しく思っているようだ」と話す。
伊坂さん本人は出演していないものの、ミステリー作家の魅力が十分伝わった。
(ジャーナリスト 佐藤太郎)