高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 愚策すぎる「おこめ券」、農水官僚はなぜこんなことを思いつくのか

原資をコメ農家への直接所得補償に回した方が「よほどスッキリ」

   しかし、24年度でも需要量は当初の政府見通しでは674万トンであったが、9月時点では711万トンという見通しになっており、当初は過小需要見通しだった。

   このように政府による需要見通しは当たらない。というか、当てることは無理だ。というのは、政府の需給見通しがうまく当たるのであれば、それを使ってコメ先物市場で儲けることができるが、そんな話は聞いたことがない。かつては需要量の過大見通しが多かったが、最近数年では過小見通しが多く、例えばここ3年間では需要が生産を上回る超過需要は20~40万トンになり、それが結果としてコメ価格の10~60%の上昇につながっている。

   コメの需要見通しが当あたらないことを認めれば、需要に生産を合わせる「減反」も意味ない、となる。その上で、コメ農家を守るとなれば一定の直接所得補償をして、コメ価格が下落しても上昇しても一定の所得が確保できるにしたらいい。

   「減反」に要するカネが4000億円、今回おこめ券へ「重点支援地方交付金」 4000億円が特別枠として渡される。ざっくりいえば、このうち7000億円程度はコメ農家、1000億円程度はJAなどの流通者に落ちるだろう。

   当たらない需要見通し、それに基づく減反、流通者支援のおこめ券もやめて、7000億円をコメ農家への直接所得補償に回したほうが、よほどスッキリしている。


++高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはしよういち)元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。

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