ジャーナリストの伊藤詩織さんが2025年12月15日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見を開いた。監督したドキュメンタリー映画「Black Box Diaries」の日本公開版で修正した箇所を説明した一方、この修正について「ファクトチェックもなく」報道されたなどとして批判を展開した。会見の終盤、東京新聞の望月衣塑子記者と応酬する場面もあった。
ホテルの防犯カメラ映像について言及
「Black Box Diaries」は12月12日に日本で劇場公開した。世界各国で上映されている同作品を巡っては、一部の映像が未承諾で使われる問題が起きていた。日本公開版では、こうした指摘を受けた映像を修正している。
ホテルの防犯カメラ映像を映画で承諾を得ずに使用した問題などを訴えていたのは、伊藤さんが性被害を訴える民事訴訟で代理人を務めた西廣陽子弁護士らだ。2月20日の記者会見で、西廣弁護士は、伊藤さんとの通話が無断で録音されていたなどと報告していた。
また望月記者は1月14日付の東京新聞の記事で、「日本の女性記者たちが性被害などを語った非公開の集会の映像が、一部の発言者の許諾がないまま使われていた」と報じた。その後、「誤解を招く表現」があったとして、見出しと本文の一部を修正している。だが、この集会での映像は一部の発言者の許諾を得ずに使われていた。
さらに日本での公開前日の12月11日には、西廣弁護士が「残念ながら、法的な問題は解決されてはいません」「伊藤さんの映画は、重大な人権上の問題を孕んでいると言わざるを得ません」などと批判するコメントを発表したと、複数メディアで報じられている。
こうした中、伊藤さんは15日の会見で、ホテルの防犯カメラ映像について、ホテルの内装や外装、タクシーなどをCGで加工していると説明した。そして、ホテル側に映像として使う許諾を得ようとしていたものの、「なかなか許可が下りなかった」と語った。
「私は何人もの捜査官に何が起きたかを語ってきた。でも、『それを裏付けられない』と、いつも言われていた。やっと、この防犯カメラの映像を見つけて、それが裏付けとなって捜査が進んだ。この映像がなければ、この作品自体が出来なかったと思います」
西廣陽子弁護士への批判を繰り返す
また映画に登場する捜査官Aについては、オリジナル版から一貫して特定できる映像を使用せず、音声も加工していると、伊藤さんは自身のサイトなどで説明している。日本公開版では、さらに音声を加工した。
その上で会見では、この映像に関する西廣弁護士の主張に対し、「(西廣弁護士が)昨年10月に記者会見をした時に『この映像を加工していない』というような発言をしていたが、これは違います」と反論した。
その後、日本で上映が遅れた理由を尋ねられた伊藤さんは、「私たちが日本で上映することを拒んでいたわけではありません。ただ、その道のりは大変なものでした」と語った。この回答の中でも、西廣弁護士らを批判した。
「その弁護士は事実ではないことを話し、それが広まってしまった。それがずっと続いてきた。今年に入ってからも、弁護団に修正版を見せようと働きかけてきた。とくに今年に入ってから4回アプローチしたが、毎回断ってきた。だが3月に、弁護団が『その前に見せてくれなかった』という風に言っていた。それは嘘なんです。事実ではありません」
望月記者「酷い。あまりにも酷い」、伊藤さん「西廣さんには4回も謝罪」
続けて伊藤さんは、「ファクトチェックもなく、彼らの言葉だけ広がってしまったことを非常に残念に思った」とし、メディアの報道についても批判。
「一方的な虚偽の情報が出回ってしまったことに、非常にショックを受けた。特に1人の記者は、『私たちが、被害者のミーティングをその許可なく無断で利用した』ということを言っていたんですが、それは完全なる嘘です」
そして会見に参加していた望月記者に向けて、「謝罪はまだありません。あなたのことをリスペクトしているが、こういうファクトチェックをせずに報道してしまったこと、非常に遺憾に思います」と伝えた。
これを受け、望月記者は質問の中で、「私が書いた記事の原文はそのままだ。タイトルが確かに誤読をさせたとして修正しました」と説明。しかし、「それ以上に、あの勉強会で多くの人たちの、性被害を訴えていた話の人には許諾を得ていたが、それ以外の多くの人々から許諾を得ず、その後トラブルになったことも報じた」とし、このトラブルに対する回答を求めた。
そして望月記者は、「西廣さんはじめ、今日もかなり攻撃的な話ばかりだ。傷つけた方々に何を思うのか。私を含め多くの支持者・支援者が、今あなたに大変失望を受けている」と批判した。
これを受け、伊藤さんは、タイトルの修正に関して批判していると、司会者から「これは後で2人の間で解決してもらえますか」と制止された。
だが望月記者は、「なんで謝罪がないの。なぜ西廣さんに対する謝罪がないのか」「なんでああいう描き方をしたのか。本当に酷いことですよ。酷い。あまりにも酷い」と批判。これに対し、伊藤さんは「Wow」と驚きを示した後、「私、4回も謝罪してますよ、西廣さんには4回も謝罪しています」と答えていた。