「育休もらい逃げ」で退職代行、依頼は原則「お断り」 労組運営の代行サービス見解「支えている方の権利も重要」

   育休後に職場復帰することなく退職するいわゆる「育休もらい逃げ」をめぐり、合同労働組合「私のユニオン」が運営する退職代行サービス「退職サポート」の公式Xが2025年12月15日、「『育休後に職場復帰しないで退職』するケースでの退職代行のお引き受けは原則しておりません」と投稿した。

   退職サポート運営担当者は取材に、「育児休業という制度は利用する方、そして我々のような退職代行のモラルが問われると考えております」とコメント。例外的に退職代行を引き受けたケースや、ほかに依頼を原則断っているというケースについても明かした。

  • 「育休後復帰せず退職したい」…退職代行への問い合わせは多いという(画像はイメージ)
    「育休後復帰せず退職したい」…退職代行への問い合わせは多いという(画像はイメージ)
  • 退職代行「退職サポート」のX(@taishoku_union)より
    退職代行「退職サポート」のX(@taishoku_union)より
  • 「育休後復帰せず退職したい」…退職代行への問い合わせは多いという(画像はイメージ)
  • 退職代行「退職サポート」のX(@taishoku_union)より

「職場復帰せず有給をすべて取得して辞めたい」問い合わせは多い

   「育休もらい逃げ」をめぐっては、読売新聞社のメディア「大手小町」が15日に配信した「『育休もらい逃げ』は制度の悪用? 職場復帰しないで退職する女性に罵詈雑言『これから育休取りたい人たちに大迷惑』」と題した記事がヤフーニュースのトップに掲出される「トピックス」に選出されたほか、X上でも注目を集め、話題になっていた。

   退職サポート公式Xはこの記事を引用し、「育休明けでの退職代行の問い合わせは結構あります」と明かした。特に「育休後に職場復帰せず有給をすべて取得して辞めたい」といった問い合わせが多いとした。

   しかし、退職サポートでは、「育休という制度の趣旨を考え『育休後に職場復帰しないで退職』するケースでの退職代行のお引き受けは原則しておりません」と伝えた。なお、「納得できる理由がある場合は除きます」と補足した。

   続けて、「労働組合としては育休明けで辞める方の権利と同様に、育休制度を職場で支えている方の権利も重要と考えていますので、育休明けの取り扱いは『法律上問題ないからOK!』とはなりにくいと思います」と見解を示した。

   この投稿はXで注目を集め、「退職代行業者が退職代行できませんって言うって相当なことだよね??」「制度の趣旨だよね、ほんとに」といった声が寄せられている。

「真っ当に運営している会社」や制度そのものへの影響懸念

   17日にJ-CASTニュースの取材に応じた合同労働組合「私のユニオン」の担当者は、育休制度について次のように説明した。

「ご存知の通り、育児休業は職場復帰が前提になっている制度です。『会社を辞める、有給を消化して退職する』ことは法律で認められていますが、一方で育児休業には間接的に国民が支払った税金が使われており、また、雇用する会社や同僚の協力もあって成り立つ制度です」

   また、退職サポートは労働組合が運営しているため、「労働組合法により依頼者の代わりとなって会社と退職交渉が可能で、会社側は交渉を拒否できません」という。そのうえで、育休後職場復帰しないまま退職するケースを断っている詳しい理由を次のように説明した。

「その為、法律の趣旨に反するお引き受けをした場合、真っ当に運営している会社やその中で働いて育休を取得している方を支えている人たち、そして育児休業という制度自体に影響が出てしまいますので、やむを得ない理由がないにもかかわらず職場復帰しない退職代行のご利用はお断りしている次第です」

   続けて、「育児休業という制度は利用する方、そして我々のような退職代行のモラルが問われると考えております」と見解を示した。

「会社に対する負の感情から抜け出せない方」は依頼を断っている

   退職サポートのX投稿では、「納得できる理由がある場合」には引き受ける場合があるとしているが、具体的にどのようなケースが該当するのだろうか。担当者は、過去に引き受けたことのあるケースとして、「育児には精神的な負担が掛かりますので『ご本人の精神的な負担で出社が難しくなった』」「保育園・幼稚園の受け入れや周囲のサポート環境の急変で『復職直前にして育児環境が急に変わって勤務の継続が難しくなった』」といった例を挙げた。

   担当者は、育休後の職場復帰なしの退職以外にも、「会社へ不満を持っていて退職にあたりその不満をすべてぶちまけて欲しい」「退職に際して会社を困らせてやりたい」といった場合は原則依頼を断っているという。

   退職サポートは退職代行を「社会のセーフティネット」と捉えているといい、「何らかの理由で退職できない、退職意思を伝えられない方のサポートをしております」とサービスの趣旨を説明。「退職を機に新たなスタートを切るお手伝いをしたいと思っていますので、お話をして説得しても会社に対する負の感情から抜け出せない方についてはお断りさせていただく形となります」と、依頼を断る理由を説明した。

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