若槻千夏、上谷沙弥、野呂佳代、弓木奈於...女性タレントの生存戦略が変わる テンプレートの超越が生む「共感」

   このところ、芸能界のポジション争い、椅子取りゲームにおいて、従来のイメージや「テンプレート」の「外」に活路を見出す女性タレントたちが求められている。つまり「~なのに」という矛盾や違和感こそが、最強の武器になっている。

  • 女性タレントの生存戦略が変わったのか(写真はイメージ)
    女性タレントの生存戦略が変わったのか(写真はイメージ)
  • 若槻千夏さん(2025年2月撮影)
    若槻千夏さん(2025年2月撮影)
  • 女性タレントの生存戦略が変わったのか(写真はイメージ)
  • 若槻千夏さん(2025年2月撮影)

約10年の休業ののち復活...「無双状態」の若槻千夏

   たとえば若槻千夏さんがバラエティで「無双状態」と称されるようになったのは、ある戦略的な判断からだ。2児の母でありながら、「ママから得るものが1個もない」「ママ何ができるの?」と娘から辛辣な言葉を吐かれる「ダメ母」ぶりを告白。いわゆる「理想的なママタレ像」という枠の外で活躍することを選択することで、約10年の休業ののち、復活することができた。むしろ「母親失格」という矛盾があるからこそ、視聴者の笑いと共感を呼び起こす。

   一方、上谷沙弥さんはスターダムの女子プロレスラーという「強そう」な立場を背負いながら、バラエティの場では素顔の「かわいらしさ」を見せる。ヒールレスラーとしてリングでは圧倒的な悪役だが、『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)や『ラヴィット!』(TBS系)などテレビに出ると、そのあどけないギャップに驚かされる。この「強そう~なのに、かわいい」という矛盾が、彼女を唯一無二の存在に仕立てている。

   そして野呂佳代さんは、AKB48という「完璧さ」を求められる世界から「はみ出た」後、プラスサイズモデルという「ありのままの自分」を活かした。バラエティでは「素の自分」「普通っぽさ」を武器にし、女優として花開いた。4月からは黒木華主演の新ドラマ『銀河の一票』(フジテレビ系)で準主役を務める。「アイドル時代とは違う自分の価値を見つけ、その道を歩む」-―それは1つの象徴的な人生ストーリーであり、むしろ現役時代の「失敗」や「不遇」こそが、その後の活躍を際立たせるのだ。

「弓木ワールド」独特の世界観で人気の弓木奈於

   あるいは、弓木奈於さんは、乃木坂46という「可愛さを求められるアイドル」という文脈に身を置きながら、バラエティでも異彩を放つ存在だ。「弓木ワールド」と称される独特の世界観をアルコ&ピースに見出されて以降、バナナマンやシソンヌ・長谷川忍さん、ジャングルポケット・太田博久さんらと堂々と渡り合い、芸人顔負けのトークスキルや鋭いツッコミ、尽きないエピソードで強い存在感を示してきた。それでいて彼女は、あくまで王道アイドルになることも望んでいるという。この「独特の世界観なのに、王道を目指す」という二面性が、弓木さんの個性をより際立たせている。

   このように、興味深いのは、既存カテゴリーや「既成のテンプレート」から外れることを恐れず、むしろそこに価値を見出し、自分にしか表現できない「素の自分」を、徹底的に活かすことが実は、令和のテレビ業界における最後のブルーオーシャンなのだ。視聴者たちもまた、完璧さを演じる人間より、ありのままの自分を見せる人間に惹かれている。時代は確実に変わっている。

(川瀬孝雄)

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