「圧巻の眺め」「楽園がある」――。2026年3月上旬、岩波文庫や講談社学術文庫、ちくま学芸文庫などの文庫本レーベルの出版社在庫を全点取り揃えたと、東京都稲城市にある大型複合書店・コーチャンフォー若葉台店が報告し、SNS上で大きな反響を広げた。こういった取り組みは全国的にも珍しい。同店の担当者に狙いを聞いた。
揃えたのは5レーベルの出版社在庫全点。SNS反響
注目を集めたのは、コーチャンフォー若葉台店が3月7日に投稿した内容だ。岩波文庫とちくま文庫、ちくま学芸文庫に続き、講談社学術文庫と角川ソフィア文庫も出版社在庫を全点揃えたと報告し、合計で約6600アイテムにのぼると明かした。
投稿では、上記の文庫本レーベルが本棚を埋め尽くす光景を紹介しており、16日19時時点で約60万回表示されるなど大きな話題になった。SNSでは、「圧巻の眺め」「訪れてみたいです」「素晴らしい!」「最高すぎる!」などの声が相次いでいた。
担当者によれば、この取り組みを始めたのは26年1月末で、初めに岩波文庫の出版社在庫全点を取り揃えた。1月28日の投稿もSNSで大きな反響を広げ、複数のメディアが取り上げた。
インフルエンサーのレビュー投稿で売り上げに変化
取り組みの背景にあるのは、SNSを中心とする読書文化の広がりだった。SNSを活用して出版業界に新しい価値を届けるプロジェクトが立ち上がり、SNSのインフルエンサーが本のレビューを投稿することで、同店の売り上げにも変化が起きたという。
「大きなバズによって1冊の本が売れるのではなく、売れるアイテムの幅がどんどん広がっていって、売り上げが伸びていきました。本の投稿や話題がSNSで増えることで、出版業界全体が活性化していくだろうという思いもあり、岩波文庫の在庫全点を取り揃える取り組みを始めました」
この取り組みを始めると店舗の売り上げにも大きな変化が起きた。岩波文庫の場合、投稿前の平日売り上げは1日5冊程度だったが、投稿直後は1日70冊から80冊売れた。その後も前年比で約5倍になっているという。
出版社の在庫を全点取り揃える意義は何か。担当者は、「目的の本だけでなく色々な本と出会えることが、書店に行く楽しみの1つです。ネット書店では、目的の本のみを探すことが多いと思います」と語る。
今後のレーベル拡充については具体的に決まっていないが、「色々と検討している」と担当者。また、同店以外の他店舗では同様の取り組みを実施していないが、「今回の反響を受けて検討していきたい」と話している。