車の購入は、多くの人にとって大きな買い物だ。販売店での説明や見積もりの内容によって、判断が左右されることもある。初めて車を購入しようと販売店を訪れた田中健太さん(仮名・30代)も、見積もりの段階で思わぬやり取りを経験したという。想定より50万円高い見積もりに戸惑い数年前、29歳のときだった。週末の外出用に車を買おうと思い、新古車を扱う販売店を訪れた。高い車は考えておらず、軽自動車の購入を考えていた。展示されている車を見ていると、営業担当者が声をかけてきたそうだ。「この車なら総額180万円くらいで乗れますよ」金額としては想定していた範囲内だったため、店内で見積もりを出してもらうことにした。席に座ると、まず車の説明があり、その後「オプション」の話になったようだ。カーナビ、ドライブレコーダー、ボディコーティング、フロアマット、ETCなど、さまざまな装備について一つひとつ説明された。田中さんが必要かどうかを確認すると、営業担当者はこう言ったという。「皆さん、だいたい付けられます」少し鼻で笑うような言い方だったのも気になった。だが、田中さんは「必要なもの」だと思い、断ることができなかったそうだ。結局、意味がなさそうだと感じた機器をひとつ断るのが精一杯だった。そして、最終的な見積書を見て、田中さんは思わず固まった。総額が「230万円」になっていたのだ。「180万円くらいでは?」そう尋ねると、営業担当者は笑いながらこう言ったという。「それは車両の金額ですよ。何言ってるんですか」オプションの内訳を詳しく聞くと、カーナビ、前後ドライブレコーダー(と取付費)、ボディコーティング、メンテナンスパック、延長保証、フロアマットとバイザー、ETC車載器(と取付費)などで、合計するとおよそ50万円の追加になっていたようだ。さすがにその場で決める気になれず、田中さんは「一度検討させてください」と伝えた。だが――。購入を白紙にすると態度が急変して...すると、営業担当者の表情が明らかに変わったという。「ここまでかなり時間をかけて説明しているのは、ご理解いただけていますか」見積書を指で叩きながら言ったそうだ。さらに、次のように続けた。「ご購入の意思がないのに、簡単に見積もりなどと言われては困ります」田中さんは思わずカチンときた。確かに、オプションの相場などは詳しく知らない。一般的にそれくらいの金額になると言われれば仕方ないとも思った。しかし、「この言われ方」には強い違和感を覚えたのだ。「購入に前向きだからこそ見積もりをお願いしているのに、なぜここまで言われるのかと思いました」。「それなら、今回は白紙でお願いします」ここでは買いたくないと思い、田中さんは思い切って伝えた。すると営業担当者は、相場の説明や分割払いの話を続け、総額を安くする提案もしてきたという。「今回だけ215万円にします。これは、どこのお店でも出せない価格です。このまま進めさせていただきますね」しかし、田中さんの気持ちはすでに決まっていた。問題は金額ではなく、対応そのものだったからだ。丁重に断り、店を後にした。「ただ車を見に来ただけなのに、こんな雰囲気になるとは思っていませんでした」今でもその店の前を通ると、当時のやり取りを思い出してしまうという。大きな契約に際しては、見積もりの段階で違和感を覚えた場合、その場で決めないことは必要だ。たとえば複数の店舗で比較することなども、冷静な判断につなげるため対策といえるだろう。
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