全国チェーン「さかい珈琲」FC加盟店で「障害福祉施設」 店長語る、「サービスの質」と「福祉」の両立への模索

   全国チェーンのカフェ「さかい珈琲」の紀の川店(和歌山県)は、一見ほかの店舗と変わらないが、実は障害を持つ人などに就職機会の提供や就労支援を行う「就労継続支援A型事業所」でもある。社会福祉法人「檸檬会」がフランチャイズ加盟して運営しており、こうした取り組みは全国でも珍しい。

  • さかい珈琲紀の川店(檸檬会提供)
    さかい珈琲紀の川店(檸檬会提供)
  • さかい珈琲紀の川店(檸檬会提供)
    さかい珈琲紀の川店(檸檬会提供)
  • さかい珈琲紀の川店(檸檬会提供)
    さかい珈琲紀の川店(檸檬会提供)
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  • さかい珈琲紀の川店(檸檬会提供)
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「しんどくなった時にすぐに助けを出せるので働きやすい」

   「就労継続支援A型事業所」とは、障害を持つ人や難病の人たちが一般企業への就職が困難な場合、サポートを受けながら雇用契約を結び働ける福祉サービスで、最終的にはスキルを身につけ一般企業への就職を目標としている。

   「さかい珈琲」紀の川店では、店舗責任者である店長の川邊憲一さんとアルバイト約25人ほか、福祉の専門家であるサービス管理責任者と支援員が2人と、就労継続支援A型事業所の利用者が12人働いている。23年にオープンした。

   利用者が担当するのは一般的な飲食店と同様の業務だが、「オーダーを聞く」、「お冷を持っていく」、「レジで会計をする」といった作業を一つひとつ細分化し、割り振りしている。 しかし、例えば「お冷を持っていく」作業だけでは「最低賃金に見合う働き」にはならない。そこで、例えば「清掃業務」を組み合せるなどして、賃金に見合う働きになるように調整していると、川邊さんは説明した。

   利用者個人に合わせた働き方を模索しながら、業務効率化のためのトライアンドエラーも繰り返しているとした。

   例えば、注文された料理を客のところに運ぶ際、スプーンや調味料など料理に合わせた付属物も一緒に持っていく必要があるが、利用者にとってはそれが難しい作業だったという。 そこで、一連の作業を「料理をお盆にセットする」作業と「料理を運ぶ」作業に細分化。2人体制で行い、その2人をフォローできる人員を1人配置した。この体制を整えたことで、一連の提供工程が可能となり、サービスとして提供できるようになったという。

   川邊さんは、

「一般的に健常者が自分自身で工夫して乗り越えられるような場面でも、障害のある人が自力でそれを乗り越えていくというのは、少しハードルが高すぎる場合があります。なので、一つひとつの作業を個人に合わせて細分化し、また、必要な支援を行います。そして、無理のない範囲で半歩先のお仕事をお願いすることで、成長を促すよう工夫しています」

と話す。

   川邊さんが意識しているのは、利用者の「普段と違う様子には敏感に反応する」ことだという。アルバイトにも利用者が辛くなったときの行動などを共有し、支援員に限らず誰もがサポートできる体制作りに取り組んでいる。利用者からも「しんどくなった時にすぐに助けを出せるので働きやすい」との声が上がっている。

「お客様から障害者施設と思われたらダメ」

   一方で、「さかい珈琲」のブランドを守ることも大切だ。川邊さんは、「ソフト面、つまり中身は障害者施設でなければならない。でも、外から見た時に、お客様から障害者施設と思われたらダメだと思っています」と話す。

   紀の川店のメニュー価格は、全国の他の店舗と同一基準だ。就労継続支援A型事業所だからと安くしているわけではない。

   川邊さんは、「お客様からは(他店舗と)同等の金額をいただいていますので、就労支援の施設だから質が落ちてもいいという理由にはなりません」と話す。

   フランチャイザーによるクオリティチェックも、商品の盛り付け方や提供スピード、清掃など、他店舗と同じ基準で受けている。客からは、「障害のある人が働いているとは思っていなかった」と驚かれることが多いという。

「『障害のある方だから仕方がないよね』と言われるお店にはしたくないです。そのためには、利用者さんには最初は高く感じるハードルを超えてもらう必要がありますが、日々考えて営業しています」

さらに川邊さんは、次のように思いを語った。

「『障害のある方だからできない』とか『障害があるけれども頑張ってる』といったように、『障害のある方だから』という言葉が好きじゃないんです。飲食店でお客様に料理を提供し、良い時間を過ごしてもらうというなかで、障害者だから、健常者だからというのは何も関係のないことだと思っています。障害の有無によって分け隔てることのない、そういう理解が世の中に広がればいいなと思っています」

フランチャイザーに「現場に合わせた柔軟な対応」相談できた

   檸檬会はなぜ、「さかい珈琲」にフランチャイズ加盟したのだろうか。

   檸檬会では、さまざまな社会課題に対して事業を通して解決している。その課題の1つに、障害のある人の就労問題があったと説明する。「安定した収入がないと自立につながらない」といい、これを解消するため、利用者と雇用契約を結ぶことが必須となっている就労継続支援A型事業所の運営を始めた。

   低賃金問題を解消しつつ、利用者が働き続けられる環境を整えるスキームを構築する中で、チェーン店のフランチャイジーとして就労継続支援A型事業所を運営するに至ったという。

   フランチャイズ先を探すなかで、「さかい珈琲」のフランチャイザー(フランチャイズ本部、運営会社)であるJ・ARTは、就労継続支援A型事業所運営に理解があったと話す。

「営業時間やメニューの調整、現場に合わせた柔軟な対応などもご相談に乗っていただけたので、安心してスタートできました」

   檸檬会は4月1日、同福祉法人の「さかい珈琲」2店舗目である奈良三郷店をオープン。今後、就労継続支援A型事業所としての運営も開始する予定だ。

   また、フランチャイズ加盟による就労継続支援A型事業所の運営としては、さかい珈琲紀の川店を含めて、既に4店舗運営している。

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