自民党大会、世良公則氏「燃えろサナエ」替え歌に相次ぐ失望 「音楽に政治を持ち込むなよ」論争から10年

   ミュージシャンの世良公則氏が2026年4月12日、自民党大会にサプライズ登場。自身のヒット曲を替え歌にして高市早苗首相を持ち上げた。これに先立ち、世界的ロックバンド「ディープ・パープル」の官邸訪問を巡り、布袋寅泰氏のSNS投稿も波紋を広げた。ファンの間ではロックと権力との関係性に対する議論が再燃している。

  • 世良公則氏の替え歌「燃えろサナエ」には賛否の声が噴出している(写真は自民党のXから)
    世良公則氏の替え歌「燃えろサナエ」には賛否の声が噴出している(写真は自民党のXから)
  • 笑顔であいさつする高市早苗首相(自民党総裁)(写真は高市氏のXから)
    笑顔であいさつする高市早苗首相(自民党総裁)(写真は高市氏のXから)
  • 世良公則氏の替え歌「燃えろサナエ」には賛否の声が噴出している(写真は自民党のXから)
  • 笑顔であいさつする高市早苗首相(自民党総裁)(写真は高市氏のXから)

高市首相は席を立ちあがって大はしゃぎ

   70年代後半にロックバンド「世良公則&ツイスト」としてヒット曲を飛ばした世良氏は、党大会で「燃えろいい女」を披露。サビの部分の歌詞を「燃えろサナエ」と歌った。学生時代にはドラムを叩くなどロック好きを公言している高市首相は、席を立ち上がって大はしゃぎだった。

   25年7月には参院選に無所属で立候補するも落選した世良氏。このところ自身のX(旧Twitter)には外国人問題や中国脅威論を繰り返し投稿するなど、保守的な主張が目立っており、高市首相とは考え方が一致する部分が多かったのかもしれない。

   だが、この替え歌パフォーマンスに対するファンの反応は微妙だ。SNSには「ご自分の代表曲をこんな風に使うなんて...本当にガッカリしました」「燃えろサナエで大炎上」「次は当選したいんでしょうね」などの声が書き込まれている。

布袋寅泰氏「素晴らしいこと」投稿を削除

   これに先立ち、ロックと権力との関係を巡る議論を呼んだ出来事がもう一つあった。来日中だったディープパープルのメンバーが10日、高市首相を表敬訪問。「夫と喧嘩をしたら『Burn』を叩いて、呪いをかけている」とジョークを飛ばすなど上機嫌だった首相は、ドラマーのイアン・ペイス氏に自身のサイン入りスティックをプレゼント。もっとも、ペイス氏は、高市氏がプレゼントしたものとは別の楽器メーカーと契約しているため、この行為には「相手への理解も敬意もズレている」との見方も出ている。

   そして、この訪問に反応したのが、日本を代表するギタリストとして知られる布袋氏だった。11日深夜、自身のXに「未だかつて日本の首相がロックンロールと交わったことがあったか?素晴らしいことなんだよ」と興奮をにじませながら投稿。だが、投稿は翌日までに何故か削除されてしまった。

   この対応にSNSでは「ロックンロールの根幹って王道の価値観、政治、世代、そういう権威に迎合しないことだと思ってました」「ギタリストだと思ってたら太鼓持ちだった」など、失望の声が相次いだ。

NAOKI氏、権力への迎合は「先輩も重鎮も関係なく好かん」

   一連の動きに疑問を投げかけたのが、ロックデュオ「ラブサイケデリコ」でギターとベースを担当するNAOKI氏だった。自身のXに「ディープパープルをダシにすり寄って来る総理も、政府にすり寄ってくロックミュージシャンも好かん。先輩も重鎮も関係なく好かん」と投稿。さらに布袋氏の発信についても「ハッキリ言っておきたい。全く素晴らしいと思わない。芸術に政府のお墨付きなんていらない」と一刀両断した。

   ロックの原点は「反体制」という考え方は欧米では一般的だ。米国では、ロック界の重鎮として知られるブルース・スプリングスティーン氏がトランプ政権を批判。これに逆上したトランプ氏が支持者にコンサートへのボイコットを呼びかける騒動に発展した。また、ガンズ・アンド・ローゼズやグリーン・デイなどの大物バンドもトランプ氏を批判。エアロスミスやフー・ファイターズは、トランプ陣営の集会で曲を使われたことを抗議していた。

   翻って日本では16年、SNSで「音楽に政治を持ち込むなよ」論争が勃発。野外音楽イベント「フジロックフェスティバル」に、安保法制反対を訴えていた学生団体「SEALDs」メンバーの出演が発表されると、激しい拒絶反応が噴出していた。

   それから10年が過ぎ、今度はベテランアーティストが権力側に接近するという対照的な構図が見えている。25年の参院選では「歌だけ歌っていろ、は職業差別だ」とも語っていた世良氏。この件について音楽プロデューサーの松尾潔氏は自身のXで「その彼が、現職首相を眼前にして賛意をにじませることで〈音楽に政治を持ち込むな〉論争に思いがけない形で"決着"をつけたのだとしたら--あまりにも皮肉だなぁ」と評した。

姉妹サイト