憲法改正論議、議員も国民も「勉強不足」か  世論調査では焦点の「緊急事態条項」は「わからない」が最多38%

   高市政権が発足してから憲法改正論議が急速に高まり、高市早苗首相は「改正発議」を「1年後」と区切る前のめりだ。その論議の焦点の一つになっているのが「緊急事態条項」だ。ところが、毎日新聞が2026年5月25日に公表した憲法改正の世論調査でその「緊急事態条項」について聞いたところ、「わからない」が38%で最も多かった。

  • 高市早苗首相(2026年2月撮影)
    高市早苗首相(2026年2月撮影)
  • 橋下徹氏(2015年5月撮影)
    橋下徹氏(2015年5月撮影)
  • 高市早苗首相(2026年2月撮影)
  • 橋下徹氏(2015年5月撮影)

緊急事態条項「わからない」と「必要ない」とで半数を超える

   毎日新聞の世論調査は、緊急事態条項について「あなたの考えに最も近いのはどれですか」と質問している。もっとも多かった「わからない」に次いで「緊急事態条項を設ける憲法改正は必要ない」が29%だった。

   これに対し、「内閣の権限強化を認めるべきだ」は15%、「内閣の権限を強化するとともに、国会議員の任期延長を認めるべきだ」が11%、「国会議員の任期延長のみ認めるべきだ」6%だった。憲法改正の是非については、聞いていない。

   緊急事態条項は、自民党が検討する憲法改正項目のひとつで、外部からの武力攻撃や大規模な災害などの場合に、国会議員の任期を延長するほか、政府が緊急の政令を定めることを可能にするための改正だ。安倍晋三政権の時代に、憲法改正を目指す4項目として「自衛隊明記」などとともに提起され、高市早苗政権が引き継いだ。

橋下徹氏「憲法は何なのか理解していない国会議員多かった」

   5月14日の衆院憲法審査会では、緊急時の国会議員の任期延長について、自民党が「概ね合意が得られる」と主張、日本維新の会などが早期の条文化を要求したのに対し、野党からは緊急時に政府の権限を強化する「緊急政令」に慎重な意見が相次いだ。

   しかし、木村草太・首都大学東京教授(憲法学)は、「改正する必要はなく、乱用の危険が大きい」と断言する(共同通信)。

   「現行憲法は、参院の緊急集会の制度を設けているから、選挙中に緊急事態が起きても議会は活動できる。法律の範囲で政令を定めることも既に認めている」という。逆に、わざわざ「緊急政令」を定めることは、「他の政令ではできないことをできる規定」として使われる危険がある、と木村教授は指摘する。

   橋下徹・元大阪府知事・市長(弁護士)は、「憲法というものは何なのかを理解していない人たちが、国会議員に多いんだと衝撃を受けました」という。橋下氏は、現在連立政権を形成する「日本維新の会」の前身「大阪維新の会」を立ち上げた。安倍政権で集団的自衛権が議論された2018年に、木村教授と対談した共著「憲法問答」でそう語っている。

   「維新の会の国会議員と話をして驚いた。議員なのに憲法の教科書で、薄いものすら読んでいない」と橋下氏は対談で話している。「維新の会では、リクルートのプロセス(議員候補への採用)で、憲法の知識を考慮していなかったんですか」と木村教授に問われたのに対し、橋下氏は「まったく考慮していなかったですね。正直、時間的余裕がなく、試験をやるほどのマンパワーもありません」と。ただ、その後設置された憲法審査会で議論が始まると、「すごい機能してきている。やっと政治家が憲法の議論をするようになった」(22年、フジテレビ)と期待を述べた。

高市首相はかつて、憲法の前文の「おめでたい一文を変えたい」と語る

   問答のなかで、木村教授は「憲法は、国家権力を縛るもの」とし、橋下氏は「権力を縮小することが『縛る』ことではなく、権力者に対して憲法を意識させることが『縛る』ことだと思う」と、議論を深めていた。

   憲政史上初めて自民党単独で衆院三分の二を超える議席をとったことを踏まえ、高市首相は4月12日の党大会で、「立党から70年、時は来ました」「改正の発議に何とかメドが立った、と言える状態で来年の党大会を迎えたい」と述べ、1年後を区切りに指定した。しかし、何を改憲するかは明らかにしていない。

   一方で、2000年の衆院憲法調査会では、憲法の前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という部分について、「非常におめでたい一文を、改憲の機会があれば真っ先に変えよう」と語っていた。

   憲法改正については、「改正する方がよい」57%(読売新聞5月3日)、「賛成」47%(朝日新聞5月2日)、「改正した方がよい」68%(日経新聞2025年10月~12月実施)と、新聞各紙では改正賛成が半数前後となっている。

(ジャーナリスト 菅沼栄一郎)

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