日本航空(JAL)は2026年5月27日、国内線の客室乗務員(CA)2人が、滞在先で社内規定に反して飲酒する事案があったと発表した。そのうち1人は客室の責任者にあたる先任客室乗務員(チーフパーサー)で、搭乗前の検査でアルコールが検出され、代わりのチーフパーサーを手配したためフライトが約40分遅れた。
JALでは24年4月に米国、同12月には豪州で、機長が飲酒をめぐるトラブルを起こしている。さらに25年8月に、機長=懲戒解雇=が滞在先のハワイ・ホノルルで飲酒したことが原因で乗務ができなくなり、計3便で最大18時間遅れている。これを受けて国交省は9月、JALに対して厳重注意を行っている。運航乗務員(パイロット)は滞在先の飲酒が禁止されているが、中野淳子・客室本部長は、今回の事案を受けてCAも対象に含めたことを明らかにした。
一緒に飲んでいた「乗務員B」、ホテルロビー集合直前に体調不良を申告
今回の事案を起こしたのは50代女性CA(乗務員A、1992年入社)と30代女性CA(乗務員B、2019年入社)。2人は26年5月23日7時40分広島発羽田行きのJL252便(ボーイング767型機)に乗務予定だったが、前日にホテルのラウンジで飲酒。社内規定では乗務開始の12時間前までに飲酒をやめる必要があったが、2人は「話が弾み、楽しくなってしまい、時間が気づいたらあっという間に過ぎてしまった」(中野氏の説明)ため、飲み続けた。当日朝、乗務員Bはホテルロビー集合直前に体調不良を申告、乗務員Aは検査時のアルコール検出で乗務ができなくなった。乗務員Aの代わりのCAを手配し、JL252便は42分遅れて出発。乗務員Bの代わりは手配せず、当初の予定より1人少ない5人のCAが乗務した。
乗務員Aは25年10月に、先任客室乗務員に昇格したばかりだった。
JALの規定では、(1)乗務前の検査でアルコールが検出されないこと(呼気1リットルあたり0.00ミリグラムであること)ことに加え、(2)「飛行勤務開始12時間前に体内に残存するアルコール量を4ドリンク相当以下に自己を制限すること」も求めている。「4ドリンク」は純アルコール換算で40グラムに相当する。ビールのロング缶(500ミリリットル)では2本分、日本酒では1合分にあたる。
さらに、(1)の「乗務前の検査」には、羽田・成田以外の滞在先ではホテルで行う(a)出社前検査と(b)事前検査、出発空港のオフィスや搭乗ゲート付近で行う(c)乗務前検査、の3段階がある。
「ビール300ミリリットルのグラスを2杯、白ワイン125ミリリットルのグラスを2杯」
JALの説明によると、時系列は次のようなものだ。2人は羽田発広島行きJL263便で、5月22日15時38分に広島空港に到着。16時45分にホテルにチェックインし、17時30分にホテルのラウンジで飲酒を始めた。2人はリミットの18時40分を過ぎても飲酒を続けた。乗務員Bの飲酒時間と飲酒量は調査中だとしているが、乗務員Aは19時15分時点で「ラウンジにて最後にワインを注ぎ、飲酒を継続」。21時25分に部屋に戻った。乗務員Aが飲んだのは「ビール300ミリリットルのグラスを2杯、白ワイン125ミリリットルのグラスを2杯」だった。
乗務員Aは翌5月24日の5時40分に起床。5時45分に上記(a)の出社前検査を行ったところ、0.23ミリグラムのアルコールが検知されたが、会社には報告しなかった。6時10分、乗務員Bは体調不良で乗務できないことを会社に連絡。ホテルロビーに集合する時間は、その直後の6時20分だった。
乗務員Aは(b)の事前検査を行わないまま集合場所に現れた。(c)の乗務前検査に進むためには、搭乗するCA全員が(b)をクリアすることが前提で、その実施状況はアプリで他のCAにも共有される仕組み。乗務員Aは他のCAから検査を催促されたが、しないままバスに乗り込んだという。乗務員Aは、会社の聞き取りに対して
「(乗務員Bが出勤できないことを聞いて)少し動揺してしまい、他の乗務員から『事前検査をしてください』と言われたにも関わらず、そのことでも少し慌ててしまったので、バスの中でしようと思い、『わかりました』と言いながら検査機を用意はするものの、結局は『皆さんバスに乗ってください』と他の乗務員を促し、そのまま事前検査をせずにバスに乗り込んだ。そしてバスの中でやろうとしたが、勤務離脱者の対応を会社と連絡を取り合っていたので、やはりする時間はなくなってしまい、空港に到着した」
などと釈明したという。もっとも、中野氏は、この経緯を
「0.00を出すために時間稼ぎをしたのではないかと会社が判断している」
と指摘している。
他のCAは乗務員Aを止められず「権威勾配と言われてもしょうがない状況があった」
乗務員Aらを乗せたバスは6時30分に空港に到着。6時40分に行った(c)の乗務前検査で乗務員Aから0.11ミリグラムが検知され、その後の再検査でも検知が続いたため、会社は7時7分に乗務不可能だと判断した。
ホテルを出発する時点で、他のCAが乗務員Aを止めることは現実的ではなかったのだろうか。中野氏は他のCAへの聞き取りの結果として、
「乗務のリーダーである先任に対して、やはりそれ以上言うことができなかった。権威勾配と言われてもしょうがない状況があったのだと会社は今、思っている」
と説明した。
2人への対応について、安全面のトップにあたる安全統括管理者を務める、中川由起夫・常務執行役員は、
「今回、運航規定違反といったところでもあるので、今後厳正に対処していくことを考えている」
としている。
(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)
CAの飲酒事案を受けて開かれたJAL会見、冒頭発言です。発言しているのは、安全面のトップにあたる安全統括管理者を務める、中川由起夫・常務執行役員。ちょっと音小さいです。記事は改めて。 https://t.co/haqTwCjbf2 pic.twitter.com/llClQW7CX9
— 工藤博司 (@Kudo_Nibancho) May 27, 2026