問題は「あのちゃんねる」だけではない...全体的な「番組のレベル低下」識者が指摘 背景にSNS重視と制作費の少なさ

   バラエティー番組「あのちゃんねる」(テレビ朝日系)で、番組MCのタレント・歌手のあのさんが企画で出されたお題に答える形で発言した「嫌いな芸能人」の実名を番組側が編集せずに放送した問題をめぐり、2026年6月15日の放送をもって終了することが発表された。

   専門家はJ-CASTニュースの取材に対して、今回の問題は「あのちゃんねる」だけに限った問題ではなく、全体的に「番組のレベルの低下」が起きていると指摘する。その背景には、SNSで話題になることを重視するあまり「安易な企画に流れてしまう」状況があるのではないかとした。

  • テレビ番組の撮影(イメージ)
    テレビ番組の撮影(イメージ)
  • 鈴木紗理奈さんのインスタグラム(@munehirovoice)より
    鈴木紗理奈さんのインスタグラム(@munehirovoice)より
  • あのさんのX(@aNo2mass)より
    あのさんのX(@aNo2mass)より
  • テレビ朝日
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「ベッキーの次に嫌いな芸能人は?」...お題が発端

   「あのちゃんねる」では5月18日、直前に出されたお題に答えながらサッカーのシュートを決めるという企画を放送。あのさんは「ベッキーの次に嫌いな芸能人は?」というお題に「鈴木紗理奈」と答え、これが伏せられることなどなく放送されていた。

   鈴木さんはインスタグラムのストーリーズ機能で、タレント名や番組名を伏せながら、「普通にショック」「いじめやん」などと心境を明かしていた。

   「あのちゃんねる」は22日、番組公式サイトで、「番組の不適切な質問および企画上の意図的な演出により、あの様並びに出演者様に不本意な発言を誘導し、かつその発言の精査が不十分なまま放送してしまいました」と説明。あのさんや鈴木さんに「ご迷惑をおかけしてしまった」として謝罪した。

   これを受け、あのさんは23日にXでコメントを発表。これまでにも番組側と表現や演出をめぐって番組側とやり取りを重ねていたが、「不本意な状況」が続いていたと説明。番組側が改善するとしたため様子を見ていたところだったが、「もう続けたくないので番組を降ります」と意向を示した。

   このあのさんのコメントに対し、テレビ朝日はJ-CASTニュースの取材に「あの様がご自身の思いを発信されたことについても重く受け止めつつ、内容に関するコメントは控えさせていただきます」と回答している。

   26日には、鈴木さんの事務所がコメントを発表。鈴木さん同席の場で、テレビ朝日から編集や放送の経緯や今後の番組制作の考えについて説明があったとした。テレビ朝日について、「鈴木も長年にわたり多くの番組でご一緒させていただいており、深い信頼を寄せている放送局でございます。弊社といたしましても、今後もより良い番組作りにご一緒させていただければ幸いです」とした。

   また同日にはあのさんの事務所もコメントを発表。鈴木さんの名前は直接出さなかったが、「お名前の挙がっているタレント様」とその関係者へ「ご迷惑をおかけしました」として謝罪した。

   28日には、6月15日の放送をもって「あのちゃんねる」が終了することが発表された。

嫌いな芸能人暴露企画は「時代遅れではないか」

   毎日放送(MBS)元プロデューサーで同志社女子大学教授・影山貴彦氏はこの問題について、「責任の所在は何よりもテレビ朝日にあると思います」と見解を示した。

   「嫌いな芸能人」を暴露するという今回の企画について影山氏は、「時代遅れではないか」と指摘。一方で、「品行方正なバラエティー番組だけが制作・放送されるということを望んでいるわけでは決してない」という。

   「隠れたところを見たい」「普段は聞けないようなことを聞きたい」という感情は誰しもが持つものだ。しかし、こうした内容を番組で取り上げる際には「慎重になること」「個人(演者)を尊重すること」が大切だとした。

   例えば同じ発言をしても、人によって「炎上」する人もいればしない人もいる。制作側は、「その人のキャラクターや芸が熟練された芸であるかどうか」などを考慮し、企画することが大切だとした。

   影山氏は今回の「あのちゃんねる」の企画に限らず、テレビ・配信番組全体的に「番組のレベルの低下が起きている」と指摘する。一方で、「作り手や演者のレベルが下がったとは思っていません」と強調する。

   その背景には、「SNSの存在が大きい」と指摘する。

「テレビマンやタレントが本来は『こんな番組を作りたい』『演者としてこんな振る舞いをしたい』という思いがあったとしても、それではSNSでは跳ねない、ネットで話題にならないというところで、つい安易な方向に流れていってしまう。それが番組の低下を生んでいるんじゃないかなと思います」

   また、制作費の少なさも要因の一つだとする。「制作費が少ないけれども、何かインパクトを与えたい、刺激を与えたいと思うと、安易な企画に流れてしまう」のではないかと述べた。

組織全体で考える問題だが...「トップたちが尻込みしている」

   影山氏はこの番組のレベル低下の問題について、各社が組織全体で積極的に考えていかなければならないが、こうした問題に踏み込むことを「トップたちが尻込みしている」と苦言を呈した。

   例えば日本テレビの福田博之社長は25日の会見で、「あのちゃんねる」をめぐる問題について聞かれた際、「私の見解は一定のものがあるわけではないので、控えさせていただきたいと思います」と答えたことが報じられている。

   影山氏はこうした例を挙げ、「何かがあったら、できるだけ(問題を)小さくして蓋をして、皆さんが忘れ去ることを待つということの繰り返し」と指摘。そうではなく、「ものの考え方の根本というのをテレビマンたちが根付かせるということが大事」とした。

「真面目一方の番組を作ってください、なんていうことは一切思っていなくて、刺激ある番組で、僕たちをドキドキさせるようなバラエティー番組が是非見たいとは思うんです。だから時には、『うわー、こんなことやっちゃって』みたいなこともあっていいとは思いますが、そこには差別感があってはいけないし、個人や社会全般に対して傷つけているかどうかに想像力が働いているのかなということは常に考えなきゃいけないと思います」

   そのために上層部は、「作り手たちが余裕をもって1つ1つの番組作りに臨めるような環境」を整えることが大切だと、影山氏は見解を述べた。

   例えば、余裕のなさから、若手がベテランテレビマンの話を聞き、経験や技術を吸収する機会が少なくなっているという。こうしたコミュニケーションの機会を得られる環境づくりは、上層部が積極的に作るべきだと影山氏は話した。

   また、「知恵を絞るっていうのも限度がありますから」として、制作費の捻出も、局が努力するべきことの一つだとした。

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