2025年度の国の一般会計税収が、前年度比約9兆円増の約84兆2000億円に――。2026年7月3日、財務省が発表した。6年連続で過去最高を更新する見通しだという。
また、経団連は2026年夏のボーナス(大手企業の1次集計)について、平均妥結額が100万8706円と公表した。
数字上では好景気だが、全国の満20歳以上の個人4000人を対象にした、日本銀行による「生活意識に関するアンケート調査」(2026年3月調査)によれば、景気が「良くなった」と答えたのは、わずか6.3%に過ぎない。
税収増も、コスト増がかさむ中小企業には厳しい現状
公表された2025年度の税収の中身を見ると、好調な企業業績を受けて法人税が大きく伸び、消費税や所得税も物価上昇や賃上げを背景に堅調に推移している。
つまり今回の税収増は、企業業績の拡大と物価高によるものだ。
だが、その好況は一般の家計に伝わっているとは言いづらい。2025年の実質賃金は前年比1.3%減と4年連続のマイナスとなっている。
2026年の春闘では賃上げ率が5.01%と、3年連続で5%を超える高水準を記録したものの、物価上昇や社会保険料の負担増がその伸びをかなりの部分で相殺してしまっている。
加えて深刻なのが、企業規模による格差だ。東京商工リサーチの「2026年2月『賃上げ』に関するアンケート調査」によれば、2026年度に賃上げを「実施する」と回答した企業は83.6%だが、大企業が93.8%、中小企業は82.8%と差が広がっている。
賃上げを「実施しない」と答えた企業の理由として、最も多かったのが「コスト増加分を十分に価格転嫁できていない」の44.7%、続いて「原材料価格・電気代・燃料費などが高騰している」が43.5%だった。日本企業の9割以上を占める中小企業や、そこで働く人たちには厳しい状況が続いていることがわかる。
消費税、住宅ローン、ガソリン......一律減税は高所得層に厚い恩恵
こうした閉塞感の打開策として期待されているのが食料品の消費税減税だが、一律の消費税減税は、消費額が絶対的に多い高所得層ほど、手元に残る減税額が大きくなるため、結果的に高所得者に有利に働くという指摘がある。
一律減税は高所得者に有利という構図は、住宅ローン控除にも当てはまる。年末のローン残高に一律0.7%の控除率を掛けて税額から差し引く制度だが、より高額な物件をより多くの借入で購入できる高所得層ほど、控除される金額は大きくなる。
ガソリン減税についても、1リットルあたりの減税額は所得に関係なく一律である以上、車を複数台所有していたり、走行距離が長かったりする層のほうが、恩恵は大きくなりやすい。都市部で車を持たない層には恩恵は小さいのだ。
減税という言葉は響きがいいものの、制度設計を細かく見ていくと、その多くが、高所得層にメリットの高い仕組みになっているように見える。
税収増は財政再建よりも防衛費に?
一方で、増収となった税金はどこへ行くのだろうか。自民党内では「責任ある積極財政を推進する議員連盟」が経済成長とインフレによる税収増を防衛費の財源に充てることができると期待する動きも報じられている。
それならば、その一部を将来世代へのツケである国債の圧縮に回したり、物価高に苦しむ国民に還元したりすることも必要なのではないだろうか。
高市首相の目指す「強い経済」は、税収の伸びや大企業の好業績など、マクロの数字を見る限りでは実現しているのかもしれない。
しかし、一律減税というバラマキ的な設計で高所得層により厚く配分され、財政再建という将来への備えも先送りされ続けるのだとしたら、一般市民が「強い経済」を体感することはできないのではないだろうか。