「おり」にかかっても山へ戻す、狩猟解禁しても冬だけになりそう 「クマは守るべき」の仕組みは限界寸前に

   とうとう東京でも市街地近くにクマが出没するようになり、住民はその脅威に怯えている。

   こうした状況を受け、東京都は2026年7月7日、有識者による審議会で、都内でのツキノワグマの狩猟を約20年ぶりに解禁する方針を示した。

   東京都は2008年度に狩猟を禁止しており、都内に生息するツキノワグマの絶滅を防ぐことが目的だったが、前提そのものがひっくり返ったのである。

   いま、国や各自治体はクマ対策と、その制度見直しに揺れている。

  • 鳥獣保護管理法では、狩猟や許可捕獲の対象以外の動物を捕獲することは禁止
    鳥獣保護管理法では、狩猟や許可捕獲の対象以外の動物を捕獲することは禁止
  • 鳥獣保護管理法では、狩猟や許可捕獲の対象以外の動物を捕獲することは禁止
    鳥獣保護管理法では、狩猟や許可捕獲の対象以外の動物を捕獲することは禁止
  • 東京都・小池百合子知事(2016年撮影)
    東京都・小池百合子知事(2016年撮影)
  • 鳥獣保護管理法では、狩猟や許可捕獲の対象以外の動物を捕獲することは禁止
  • 鳥獣保護管理法では、狩猟や許可捕獲の対象以外の動物を捕獲することは禁止
  • 東京都・小池百合子知事(2016年撮影)

狩猟や許可捕獲の対象以外の動物を捕獲することは禁止

   2026年6月13日、兵庫県多可町の山中でシカとイノシシを捕獲するために設置された檻(おり)に、クマが入っているのが見つかった。

   町はこのクマを爆竹などで威嚇して、GPSの首輪を装着したうえで、翌14日に町内の山へ放した。

   せっかく檻に入ったのに、なぜ逃がすのか。

   鳥獣保護管理法では、狩猟や許可捕獲の対象以外の動物を捕獲することは禁止されている。

   誤って別の動物を捕獲してしまう事態(錯誤捕獲)が生じた場合には、原則として速やかに放獣しなければならない。しかも放す場所は、捕獲された同じ市町村内とされている。

   このクマは人への被害を出しておらず、捕獲許可の申請には至っていなかった。放獣しなければ、町が違法捕獲に問われるのだ。

   町の担当者は『日刊ゲンダイ』(2026年6月17日)の取材に対し、県の管理計画と町民の安全との「板挟みになっているような感じです」と胸中を明かしている。

命がけで協力したハンターが猟銃所持を取り消しに

   制度との板挟みということでいえば、こんなケースもあった。

   2018年8月21日に、北海道砂川市で住宅近くに現れたクマの駆除要請を受けたハンターが、警察官などの立ち会いのもとで発砲した。

   しかしその行為が、建物に向けた違法な発砲だったとして、2019年4月に猟銃の所持許可を取り消された。

   猟友会のメンバーとして、命がけで協力した結果が許可取り消しという事態は、社会に波紋を広げた。

   ハンター側は処分の取り消しを求めて提訴。2026年3月、最高裁は「処分は裁量権の逸脱・乱用にあたり違法」と判断し、許可が返還された。

   ただ、錯誤捕獲の放獣ルールも、砂川市での処分も、法律の規定に沿って運用された結果ではある。

   最高裁ですら覆さざるを得なかったこの事態が示すのは、「クマは守るべき希少な動物である」という時代の前提で設計された制度に無理が生じているということだ。

   個体数が増え、生息域が人の生活圏まで広がった現在、現実が制度を完全に追い越してしまっているのである。

   環境省の速報値によれば、2025年度のクマによる人身被害は238人、うち死亡は13人。それまで最多だった2023年度の同219人/6人を大きく上回り、出没件数も5万件を超えて過去最多を記録している。

クマ狩猟の規制緩和も、課題は山積

   もちろん、国も手をこまねいていたわけではない。

   2025年9月に施行された改正鳥獣保護管理法では「緊急銃猟制度」が創設され、一定の条件を満たせば、市町村長の判断で市街地でも発砲が可能になった。

   だが、その先にはまだ壁がある。有害捕獲の許可手続きには依然として時間がかかり、錯誤捕獲の縛りは残ったまま。そして肝心の担い手であるハンターは高齢化と減少が進み、命の危険に見合わない報酬の問題も解決されていない。

   東京都の狩猟解禁にしても、狩猟期間は冬場が中心で、クマの冬眠期と重なる。実際にどれほどの効果があるのかは未知数だ。

   かつての前提のまま残るルールが、現実の変化の速度に追いつけないまま、そのしわ寄せが自治体職員やハンターなどの現場に押し付けられている。このいびつな構造をどう解消するかが問われている。

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