ルポライター・エッセイストの國友公司さんが2026年7月16日、自身のXを更新し、自らの著書『ルポ 路上メシ』(双葉社)に関する「お詫びと回収、電子配信の停止について」を発表した。
「取材対象者の心を傷つけたり立場を危うくする記述がある」
國友さんは18年に、大阪西成区のあいりん地区にあるドヤ街で生活した日々を記録した『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』でデビュー。その後も『ルポ歌舞伎町』『ルポ路上生活』など、複数のルポ作品を発表している。
國友さんと版元の双葉社は16日、Xと公式サイトを通じ、25年11月22日に発行された『ルポ 路上メシ』について、「本書によって心を傷つけてしまった当事者、関係者の皆様、ならびに関係各所の皆様に深くお詫び申し上げます」と謝罪した上で詳細を発表した。
同書に登場する野宿者・生活困窮者について「匿名および一部特徴を踏まえた仮の名前」で表現していたが、「事前に取材者の立場を明かさず、また事前・事後に取材の同意なく話を聞き、個人が特定されうる記述や発言を掲載」したという。
これにより、「取材対象者の心を傷つけたり立場を危うくする記述がある」「取材対象者の居場所・寝場所等に関する記述および画像により身体への危険をはらむ」といった「人権に関する問題」、さらに「炊き出しにおけるコミュニティの安全性や信頼関係を毀損するおそれ」など、多くの問題があったと明らかにした。
「表現においても、差別的もしくは差別を助長する危険性が非常に高い表現が複数箇所確認」されたという。
「弊社および著者の視点の中に無自覚な偏見や無自覚な特権性があった」
「社会的に弱い立場の方々について言及する際は、取材対象者の気持ち、社会的な影響について、より慎重な検討・配慮が必要でした」と振り返り、「そうした配慮がなされないまま、本書が出版されてしまったのは、弊社および著者の視点の中に無自覚な偏見や無自覚な特権性があったことが問題の本質だと考えております」と反省をつづった。
双葉社は出版社としての責任を認め、改めて謝罪。「書籍を回収し、電子書籍、オーディオブックの配信を停止する」とした。
「野宿者、生活困窮者を奇異な観察対象として取り上げて、揶揄、冷笑」
同書をめぐっては、野宿当事者および支援者からなる団体「ねる会議」が、「取材の手法と、内容の両面において、野宿者、生活困窮者を侮辱し、危険にさらすものであり、また事実関係においても多くの誤りを含みます」と抗議をしていた。
抗議文ではその内容について、取材対象者の「野宿にいたる経緯、生活保護利用の状況、病歴、職歴など多岐にわたるプライベート情報が記載」されていると説明。個人の特定や、生活場所の安全を脅かす行為だとしていた。
さらに、「同書は全体として、野宿者、生活困窮者を奇異な観察対象として取り上げて、揶揄、冷笑する視点から書かれています」とし、具体的な差別的表現の例をあげた。
16日までに、Amazonでは同書の取り扱いを終了。「この本は現在お取り扱いできません。」との表示に切り替わっている。
書籍の紹介文では、「炊き出し界に集まる人々。彼らはなぜ食事を求め、列に並んでいるのか」とし、「さまざまな街を巡り、口にした炊き出しは全52食。空腹を満たすことはできても、そこに足りなかった『何か』とは――」と内容を説明。
内容の一部について、炊き出しを提供していた具体的な地域名とメニュー、さらにそこで出会った人物について、仮名とともに「借金から逃げるために路上で暮らす」「都庁下に住む」とするなど、個人を特定できうる記述が含まれていた。