検察幹部に「万能感や選民思想」 元検事のパワハラ被害、女性検事が涙の告発

想定した筋書きに沿う証拠と供述を作り上げやすい構造が以前からある

   なぜ、こうした事案が起きるのか。会見後半では、特捜部の捜査手法と検察の人事評価が背景として繰り返し指摘された。女性検事は、警察が捜査した後に検察に引き継がれる「一般送致事件」では、警察が有罪方向の積極証拠だけでなく、無罪方向の消極証拠も証拠化して送るため、検事が証拠の存在そのものを隠すことは起きにくいと説明した。これに対し、特捜部は警察の捜査を経ずに自ら捜査を始めるため「これは証拠化する、これは証拠化しない」と選ぶことができ、想定した筋書きに沿う証拠と供述を作り上げやすい構造が以前からあるとした。

   今回の脱税事件の研修では、約1か月で起訴し、報道発表する日程まで事実上決まっていたとされる。第三者委員会の専門家として会見に同席した、検事出身の郷原信郎弁護士は、本来は研修中に事件の見立てが崩れれば別の事件に差し替えるなどの対応が必要だったと指摘。予定通りに進まなければ主任検事や部長、副部長の責任が問われるため、無理な捜査につながった可能性があるとの見方を示した。

   郷原弁護士によると、昔は「もっともっとひどいことは、いっぱいありました」。1990年代の特捜部では、取り調べ前に供述調書の原稿を主任検事に見せ、添削された内容に沿って供述を取る「原稿決裁」が常態化していたという。特捜部や公安部では、組織が描いた枠に捜査をはめ込む傾向が一般送致事件より強かったと振り返った。

   女性検事は、誠実に容疑者や被害者と向き合う検事は多いとする一方、「万能感や選民思想、認知のゆがんだ人たちが幹部職員にはびこっている」と批判した。特捜経験者が法務省刑事局と特捜部を行き来しながら出世し、「検察組織を牛耳っている」ため、現場からの異論が通りにくいとも指摘した。

   人事については、真面目に仕事をしている人もキャリアアップできていたとする一方で、問題を抱える人物も出世していくと説明。女性検事は、今回問題になった主任検事と仕事したこともあり、

「正直言って、なぜ彼が特捜キャップ(主任検事)になったのか、すごく疑問を持つこともあった」

と指摘した。さらに、

「いわゆる『ヒラメ』、自分がかわいがれるような、自分に懐くような、すごくゴマをすってくる人たちが、どんどん出世していくというのが、うちの業界」

   だと話した。また、「早く事件を処理した人が評価される」とも。処理速度や件数が優先されることで、十分に証拠を検討しないまま起訴や不起訴を決める拙速な処理を招いていると訴えた。

(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)

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