高市早苗首相は2026年8月3日、熊本地震の被災地で避難所などを視察した。だが、現地での対応やSNSを通じた情報発信について「政権プロパガンダ」「やってることが北朝鮮」などと酷評が相次ぐ事態に。支持率に翳りが見えてきた政権のパフォーマンスを優先したともとれる内容に、厳しい視線が注がれている。
日本保守党・有本香氏も「この場面には若干の違和感」
避難所訪問に先立ち、内閣広報官のX(旧Twitter)アカウントは「本日、高市総理は熊本県の被災地を訪れています。陸上自衛隊のヘリで上空から、今回の大きな地震の爪痕、被害の甚大さを、目の当たりにしました」などと投稿。高市首相がヘリコプターの窓の外を見ながら、手を合わせる写真を公開した。
だが、この投稿はすぐさま炎上。被災地よりも首相の存在を前面に出した発信に「上から目線にもほどがある」「カメラを意識した角度やめなさい」などの疑問や反発の声が続々と上がった。社民党のラサール石井参院議員は「こんな行為が自然に行われたとは信じ難いし、それをすかさずカメラマンが偶然撮ったとも思えない。画角を決め立ち位置を指定して取ったはず」と反応した。
批判が出たのは、それだけではなかった。同日15時半ごろ、高市首相は氷川町で避難所となっている中学校を訪問。被災者5人と言葉を交わす様子がテレビなどで放送された。この避難所には冷房や段ボールベッドが既に届いたといい、被災者はカメラの前で「支援物資は来るし、こんな快適な生活はないと思いました。涙が出るほどありがたいです」「不満はなく、本当に至れり尽くせりです」と感謝の言葉を重ねた。
しかし、この対応にも疑問の声が噴出した。高市首相が耳を傾けたのは、避難所の生活空間にいる被災者の生の声ではなく、あらかじめ別室で準備していた5人の「代表者」の声だったためだ。過去に東日本大震災では、避難所を訪れた菅直人首相(当時)が厳しい口調で問い詰められた例もあった。
このためSNSでは「仕込みだよね」「もう北朝鮮と変わらんよ。被災者に『ありがたい』と言わせる首相なんて歴代最悪だと思うよ」などの声も。ジャーナリストの江川紹子氏は自身のXで「誰が視察場所や面談対象者を選んだの?首相への忖度が優先?何のための視察?」と疑問を呈した。
立憲民主党の田島麻衣子参院議員はXで「こんな事をするならば、汗だくでお風呂やクーラーや簡易ベッドを待つ被災者の生の声を、膝をついて直接、聞いて頂きたかった」と、不自由を強いられている被災者の声を聞くべきだったと主張。日本保守党の有本香事務総長も「私は、高市総理が被災地へ入られたことは良いことだと思っていますが、この場面には若干の違和感を禁じ得ません」と記した。
BGM付き「プロモーション風」動画が大ヒンシュク
そして、さらに火に油を注ぐ形となったのは、首相官邸の公式SNSが発信した被災地視察の動画だった。約2分の長さの動画には、高市首相が防災服姿で颯爽とヘリに乗り込む様子や被災者と握手を交わす場面などが収められ、ほぼ全編にわたってBGMが流されていた。
動画の終盤には、避難所となっている教室の扉を少しだけ開け「お体だけ大事になさってくださいね」と5秒程度、声をかける場面も。最後は「全部が全部ありがたかったです」と話す被災者の声を聞く首相のカットで締めくくられている。
この動画が公開されると、否定的なコメントが殺到した。「災害対応にBGMをつけてプロモーションビデオみたいに発信する必要あったか?」「最初から最後まで総理が主役のPV」などの声が相次ぎ、炎上状態となっている。
九州大の南野森教授は自身のXで「高市首相の本日の被災者との面会は、首相の評価を下げるだけではないかと思います」と指摘。「こんな時に、心地良い意見や感謝の言葉しか聞かないような首相は、辛い思いをしている人々、怒っている人々、悲しんでいる人々、そしてそういう人々に連帯しようとする国民からの信頼を得られないように思います」との見解を示した。
発生から1週間が過ぎた熊本地震では、4日夕方の時点で死者は38人。うち熱中症による災害関連死の疑いが1人。いまだに7500人余りが避難所での生活を余儀なくされており、車中泊の人数は把握できていない。八代市や宇城市を中心に断水が続いており、今後も猛暑が続く懸念がある。