2026年8月13日から千葉県を襲った豪雨では道路が各地で冠水し、水没して動けなくなる車が続出した。読売新聞によると、路上に放置された車両は2800台以上。SNS上では、人気のミニバンや輸入車などの高級車が水没していたとの報告も相次いだ。そこで浮かび上がるのが、近年の「残クレブーム」が抱えるリスクだ。月々の支払いを抑えてトヨタの高級ミニバン「アルファード」などの高額車に乗れるとして注目を集める一方、災害で車を失ってもローンの残債は消えない。さらに車両保険に入っていなければ、買い替えや修理の負担まで重なる可能性がある。千葉豪雨をきっかけに、残クレの「落とし穴」がクローズアップされている。「残クレ水没アルファード」の嘆きの声豪雨の後、SNSでは愛車の水没被害を嘆く声が相次いだ。「車のローンが残っているが、車両保険には入っていない」「ローンがまだ残ってるのに廃車」「残クレで買ったアルファードが水没」といった書き込みが見られた。車が水没しただけでも痛手だが、損害をカバーする「車両保険」に入っていない場合、負担は一気に重くなる。自動車保険のうち、加入が義務付けられている「自賠責保険」は、人身事故の被害者救済が目的で、水没などの被害を補償するものではない。一方で、「車両保険」は任意での加入になる。付けていれば、台風や洪水などによる損害は基本的に補償対象となる。しかし、損害保険料率算出機構の2025年度版「自動車保険の概況」によると、車両保険の普及率は全国で47.4%。今回被害が集中した千葉県でも50.5%にとどまる。車両保険がなければ、水没した車の修理や買い替え費用は基本的に自分で負担することになる。さらに、「新車特約(車両新価特約)」を付けるという備えもある。通常の車両保険では車の価値が年々下がるため、全損しても同等の新車を買い直せる金額が支払われるとは限らない。「新車特約」では、一定の条件を満たせば新車価格相当額を上限に買い替え費用などが補償され、水害による水没も対象になり得る。「残クレアルファード」が広がった背景車両保険や新車特約を付けていない状態に「残クレ」が合わさると、負担はさらに大きくなる。「残クレ」とは「残価設定型クレジット(残価設定ローン)」の略で、将来の下取り価格(残価)をあらかじめ設定し、その差額を分割で支払うことで、月々の支払額を抑えやすくなる車の購入方法だ。アルファードのような高額車にも手が届きやすくなり、ローン残債と車の下取額が同額になるタイミングで買い替えれば、ローン残債を相殺することで、精算金を用意することなく新車に乗り換えられる。一方、傷やへこみなどで追加費用が発生する可能性があり、契約期間中は走行距離などの利用制限がある。日本自動車工業会の「2025年度乗用車市場動向調査」によると、直近2年以内に新車を購入した923人のうち、「残価設定あるいは据置型ローン/クレジット」を利用した人は15%だった。男性30代では23%、男性50代と女性30代では20%に達している。過去の同調査では、高価格帯車の購入者では利用率が3割弱との結果もあった。となれば推測すると、千葉豪雨による大量の水没車の中に、残クレで購入された車が相当数含まれている可能性がある。残クレ車が全損しても「支払い」は続く残クレ車が水没し、全損になってしまったら、どうなるのか。契約によって扱いは異なるが、大前提として、車が使えなくなったからといってローンの支払い義務が消えるわけではない。大手保険会社では、ローンや残価設定クレジットで新車を購入した場合、たとえ車が全損しても支払いは続くと説明している。また、車両保険に加入していても、支払われる保険金額によってはローン残高のすべてをカバーできない場合もあるという。日本自動車購入協会は、残クレ返済中の車を廃車にするための所有権解除には、残価を含めたローンの「一括返済」が必要になると説明している。また、トヨタファイナンスも、契約中の車が事故で全損したり盗難に遭ったりした場合は一括返済が必要としている。車の状態や契約内容によって対応は変わるため、販売店や信販会社への確認が必要になるが、非常に大きな負担になる恐れがある。もし残クレの残債があり、次の車もローンで購入すれば、「乗れない車」と「新しい車」の二重ローンを抱える可能性まで生じる。車両保険は保険料が上がるため、付けるかどうかは利用者の判断になる。月々の支払いを抑えるために残クレを選び、さらに保険料を抑えるため車両保険も外す――。この組み合わせは、ひとたび水害や事故、盗難に遭った時の金銭的ダメージを極めて大きくする。残クレブームが続く今だからこそ、購入時には災害や事故のリスクと車両保険の価値をしっかり考える必要がある。
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