漫画「みいちゃんと山田さん」巡り「啓発的な側面も」と返信 「私信」晒された担当者が明かす3つの根拠

「みいちゃんと山田さん」の啓発的な側面とは

   長嶋さんが取材で話した経験と受け止めは、「発達障害当事者協会」の担当者らが重視した点とも重なる。つまり、作品の舞台が12年に設定されている点だ。当時は発達障害への理解が進んでおらず、適切な支援も受けづらい状況だった。

   こうした時代背景なども踏まえたうえで、アニメ化への抗議を求める要望に対し、「作品を通じて現状の課題を社会に問いかける啓発的な側面もあると認識しております」などと担当者は返信した。

   この文面が協会としての公式見解ではないにしても、回答の中に記されていた「啓発的な側面」とは具体的に何を指すのか。要望に対応した担当者本人は取材に対し、下記の3点を提示した。

   1点目は、福祉業界の格言として知られる「真の弱者は救いたい姿をしていない」という現実を正面から描いた点だ。従来の作品には「最後には困難を乗り越えて克服する」などの展開が多く、支援からこぼれ落ちる人々を描いた作品は少なかったという。

   みいちゃんに対しては、「ここ最近で一番腹立つ」「みいちゃんと暮らすのは無理」「社会的な常識が一切なくて本気でイライラする」といった読者コメントも多く見られる。

   担当者は、「こうした姿を見て石を投げる人たちは必ず現れるため、作品の広まりを危惧する人たちがいるのも十分理解できます」と話す。一方で、作品が描くような現実を知ってもらうことも重要だと説明した。

   2点目は、家族の無理解により適切な支援を受ける機会が奪われる現実を描いた点だ。先述したように、みいちゃんの担任が「特殊学級」への編入を勧めるが、母親と祖母が激しく反発して、みいちゃんが小学校に通わなくなるというエピソードが出てくる。

   この場面は1999年から2000年にかけての時代だ。当時は自分の子どもを「特殊学級」に通わせることへの抵抗感が根強かったという。作品はこうした状況を扱っている、と担当者は指摘する。

   3点目は、障害認定と福祉申請の手続きの問題を描いた点だ。障害者手帳の交付を受けるには、医師の診断や専門機関の判定が必要になる。そのうえ福祉制度は、自分から手続きを行わなければ支援にはつながらない。

   作中では、みいちゃんと対照的な、ムウちゃんという人物が登場する。刑務所からの出所後に療育手帳を取得し、みいちゃんには福祉センターに行こうと提案するものの、みいちゃんは「障害」ではなく「個性的」なのだと拒む場面がある。

   担当者は上記の3点を提示する一方で、作品が差別や偏見を誘発する可能性があるとも捉えている。すでに特定の人々を「みいちゃん」「みいちゃん枠」などと呼び侮辱する事例もあると説明した。

   作品には「啓発的な側面」もある一方で、不特定多数がそう受け取るわけではない。こうした課題の存在を踏まえ、協会は出版元の講談社に対し、差別や偏見を誘発しないような作品処理と、ゾーニングやレーティングの検討を求めたとしている。

   それでも、担当者本人も協会の公式見解も、作品自体に直接的な差別表現はないという立場だ。そのため、作品は「表現の自由の範囲にある」と結論付けている。

   作品をめぐっては、協会が講談社に「一定の対応」を要請した後、製作委員会と作品公式が7月27日に声明を発表した。なお、担当者の一人によれば、製作委員会は当初から監修を入れる方針だったという。

姉妹サイト